作業療法士の認知症に対する取り組み

作業療法士の仕事の中には、「日常動作の訓練」と「創作活動」「社会復帰の訓練」「老年期の日常訓練」などいろいろありますが、作業療法士は、「認知症」に対しても取り組む作業があります。今回は、作業療法士の「認知症」に焦点を絞って紹介していきたいと思います。

■老年期と認知症について

認知症とは、脳の働きに何らかの影響があって脳の活動が正常に機能しない為に、現実と過去の経験が交錯してしまい、日常生活に支障をきたす「症候群」の一種です。
特に老年期においては、「物忘れ」に関しては、加齢によるものと認知症によるものに判断が分けられています。
年齢的な「物忘れ」は進行性がなく日常生活に影響がないので「認知症」と区別されています。

■老年期の利用者に対する作業療法士

作業療法士の仕事の利用者の中には、高齢者の方も大きな割合を占めてくる対象者となっています。「日常動作の訓練」と「創作活動」は、高齢者だけでなくすべての利用者にとって有効な作業と言えます。

高齢者にとっては、通常の日常生活においても、加齢による身体能力の低下は、避けられないものとなっていますが、作業療法士の訓練によって進行を遅らせたり、機能を維持する事が期待されているのです。認知症に関しては、高齢者の方が特に発症する確率が高いようです。

■作業療法士と認知症の関わり方

認知症が高齢者だけでなく若年層の人にも少数ですが実例が認められています。では、作業療法士は認知症とどう関わっていけばよいのでしょうか?

◎作業療法士の仕事の中には、「日常生活の動作」や「創作活動」を通じて、普段の生活の維持をサポートする作業や趣味や創作による意識によって「楽しさ」を意識させます。

◎作業療法士は認知症やその予備群の方に対して「昔の話」による回想を試みます。これは、近い現実よりも昔の事をはっきりと覚えていることが多いので、精神面の安定に効果が期待されています。

◎カラオケを使った音楽による療法もあります。これは実際に病院などでも合唱や楽器演奏などで認知症の緩和に利用されているようです。

◎体操や運動で体力の低下を防ぐことが、夜の睡眠をしっかり取ることで脳への負担が減らされることになるでしょう。作業療法士は、その人の診断に応じてプログラムを計画する必要があります。

◎すべての動作に対して、「ほめる」というプラスの事柄を本人に意識させることが作業療法士の役割でもあります。

■まとめ

認知症は特殊な事例ではありますが、作業療法士の仕事は全ての事柄に関わっていると言えるでしょう。作業療法士は、病気に対応すると言うよりも「目の前の利用者」に対応する考え方で向き合った方が、役割を発揮できるものと信じています。

これは、認知症以外の利用者さんにも通じることです。100人の利用者さんがいれば100人の対処法があって良いのではないでしょうか。