作業療法士とは,けがや病気、精神障がいや生まれながらに障がいがある方に対して作業(occupation)を通じてリハビリを行い、社会へのつながりを作り上げるという重要な役割を担っています。
1966年に国家資格として作業療法士という資格が制定されて以来、人数は右肩上がりに増え続けて2014年には有資格者が7万人を超えました。国家試験も毎年5000~6000人が受験している人気の資格です。
○作業療法のはじまり
作業療法の起源は18世紀から19世紀、近代精神医学の祖とよばれるフランス精神科医のフィリップ・ピネルが行った道徳療法であるといわれています。
当時、ヨーロッパでは精神障がい者というと周囲から恐れられ中傷の対象とされていましたが、ピネルは患者の希望や恐怖、人生で味わった苦難がその病気とどう関連しているかを研究し、弟子たちと共に今でいう認知療法や心理セラピーを提供していたとされています。
○日本での歴史
作業療法士が日本に登場したのは、第2次世界大戦後に海外との親交が持てるようになった日本の医師が海外のリハビリテーションに興味を持ったことが始まりでした。
そして1957年には日本整形外科学会評議員会で「理学療法士、作業療法士を養成する」という決議がされました。これは諸外国の医師やWHOから日本には理学療法士・作業療法士の養成施設がないことを指摘されたことも影響しているといわれています。
○国内初の理学療法士・作業療法士養成施設の設立
養成施設の設立には「役人らしからぬ役人」といわれる大村潤四郎(厚生省国立療養所課長)の努力の賜物でした。
大村は1948年に厚生省に入り、1954年イギリスの医療を視察して1957年に「リハ研究会」をつくり座長となりました。
この研究会の活動を通して理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の必要性を厚生大臣に説明、報告書を提出して理学療法士・作業療法士養成施設1校の予算獲得に成功したのです。
そして1963 年5月1日、清瀬に国立療養所東京病院付属リハ学院(砂原茂一学院長)が開校されたのです。
○国家資格化から現在へ
清瀬に初めての養成施設ができた当初、作業療法士は国家資格ではありませんでした。国家資格となったのは1965年に理学療法士及び作業療法士法が制定された翌年で、1966 年2月に初めての筆記試験、3月に実地試験が行われました。
合格者は作業療法士20人(受験者60人中)、理学療法士183 人(受験者1217人中)でした。
1966年9月に日本作業療法士協会が結成され、1975には年精神科作業療法診療報酬制度が点数化、つまり病院において作業療法士が正式に診療報酬を得ることができるようになったのです。