床ずれを起こさないための愛護的なマッサージ

寝たきり、または座位のまま過ごす時間が長い人は、体の一部分に体圧が集中するため床ずれを起こしやすくなります。自分で体を自由に動かすことができれば、しびれや痛みを感じた都度、体勢を変えることもできますが、マヒや疾患治療、意識障害がある患者は、自分の身体を自分で思うように動かすことができません。
床ずれを予防するために、圧迫を除く「除圧」を定期的に行いながら、関節や筋肉を硬直させないようにマッサージし、全身の「血流促進」を常に意識しておきましょう。

〇床ずれ予防にマッサージは有効か

床ずれを起こす直接的な原因は、ベッドや座面といった固い面に体を押し付けることによっておこる「体圧」と、その面に接した状態で体を動かすときの「ズレ力」に依ります。しかし、これらの原因によって床ずれが起るリスクは、介護を受ける人の身体状態で異なります。

床ずれを起こしにくい体づくりに取り組めば、床ずれの発生を遅らせることも可能でしょう。栄養バランスの良い食事を摂り、全身の血流をよくすることが大切です。

●軽いタッチマッサージで血行促進を
マッサージと聞けば、コリやハリがある部分を集中的に押したりもんだりする行為を想像するでしょう。しかし、床ずれを予防するためのマッサージは一般的に知られるものとは違います。

初期の床ずれは、皮膚層が圧迫によって血流不足になり、皮膚組織が損傷することに始まります。床ずれを起こしやすい人の皮膚は硬く、弾力が欠けて外力に弱い状態です。強い指圧や手技を加えると、皮下組織を壊してしまうかもしれません。

床ずれの患者に施すマッサージは、皮膚をやわらかくして、全身の血流を促進させることが目的です。まずは保湿クリームを手に取り、皮膚の上を滑らせるのではなく、軽くクリームを塗布するようなイメージで、優しく皮膚や筋肉を刺激します。わずかに触る程度でも、人のぬくもりある手が触れることにより体温が伝わるだけで、体と脳に与える刺激信号となります。

●マッサージで皮膚の健康維持と全身観察を

皮膚が潤うと、外力に耐えるやわらかさとしなやかさが現れます。皮膚の潤いに欠かせないのが水分と皮膚組織形成に必要な栄養供給です。血流をよくすると、皮膚は活性して水分を得ます。

スキンケアマッサージをするときは、特に体圧がかかりやすい骨の突出部分や、臀部、背部を注意深く観察しましょう。赤みや水疱が無いか、床ずれがある部分の創傷状態がどう変化したか、長期的な観察とケアを繰り返すことが、床ずれ予防と治療には最も大切です。

〇決して無理にマッサージをしないこと

床ずれを起こした部分には痛みが生じます。処置や入浴、排泄ケアの時に合わせてスキンケアを行えば、別にマッサージ時間を割くことなく、傷口付近に触れる機会を減らせます。患者自身の傷みからくるイライラやストレスを解消することにもなるでしょう。

処置時にやるべきことが多くて介助者は大変でしょうが、「ごく軽い力で」「愛護的に」スキンマッサージを行うように、常に意識しておきましょう。