寝たきりの患者と褥瘡の関係 布団無しには語れない

同じ姿勢を取り続けていると、体の一部分が圧迫されてしびれたような感覚になった経験があるでしょう。正座で長時間座っていると足がしびれるのと同じ現象です。

自分で体位を変えることができたら、しびれや痛みも緩和させることができますが、体を思い通りに動かせない寝たきりの患者は特に、介助の力を借りて自分の寝ている姿勢を定期的に動かしてもらう必要があります。
ずっと痺れが続くような状態は、その圧が掛かっている箇所の血行不良が原因で起こります。血行が悪くなり、皮膚が擦れて損傷を引き起こしやすくなります。この状態が床ずれです。
床ずれは医療現場で「褥瘡」と呼ばれます。この褥の言葉には「布団」という意味があり、瘡は「できもの」を表します。布団に入って長時間療養をしなければならない人が多く引き起こす損傷という意味を持っているのです。

 
○布団が原因で起こる?褥瘡のしくみ
長い時間布団で寝ている状態は、健常な人にとっては羨ましく感じるかもしれません。ただし、ずっと寝ておかねばならない人、特に体の状態が思わしくないまま安静を強いられている人からすれば、起きて体を動かせるのは非常に羨ましいのです。
布団に寝ていると気持ちいい、と感じるのも健常な人の特徴でしょう。布団に体を預けていると、常に部位のどこかに体重圧がかかります。
ふかふかの布団の場合に、その圧力が緩和されると思うでしょうが、柔らかすぎる布団は体を沈み込ませてしまい、不容易な体勢を強いられることに繋がります。

 
●布団の堅さと柔らかさの具合で褥瘡を発症する?
寝たきりの患者は、ほんの少しのずれも治癒が長引く損傷になる危険をはらんでいます。普段使っている布団では、堅すぎる、または柔らかすぎるという条件が褥瘡を引き起こす原因に直結してしまう可能性があります。
堅い布団では、体圧が局所に掛かりやすく、加圧部分(骨の突出部分)が主に褥瘡を起こしやすくなります。体を少し動かしただけでもずれによる圧迫と損傷が起こり、複数か所出来てしまうと、圧迫を回避しながら褥瘡の処置を続け、治癒に向かわせることが次第に難しくなります。
褥瘡は、発症すると完治するまでに時間が長引く事も多く、患部の深さや進行度によっては壊死してしまう事もある恐ろしい創傷です。発症してから治療に注視するのではなく、まずは褥瘡をおこさない環境を整え、加圧を防ぐ布団を使用して、快適な寝姿勢を維持できるように心がけることが大切です。