褥瘡ケアで重宝する外用薬 ワセリンについて

ワセリンは一般にも販売されている外用薬として広く知られています。肌の乾燥を防ぐために、子どもから大人まで使用したことがある人も多いのではないでしょうか。褥瘡ケアを行う上でも、ワセリンは非常に多くの場面で使われています。

○皮膚の乾燥を防ぎ褥瘡を未然に防ぐ

褥瘡ケアを行う上で、スキンケアは非常に重要な意味を持ちます。正常で清潔な皮膚状態を保つことで、褥瘡を起こりにくくし、また重症化を防ぐ効果につながるのです。

  • ドライスキンと褥瘡

寝たきりの状態が長くなりがちな高齢者の特徴に、皮膚の乾燥化があります。加齢とともに肌の保水力が失われ、潤いを肌に保てず乾燥が進むと、肌の角質層から水分が更に蒸発してしまい、ドライスキンが進行します。皮膚のひび割れや亀裂が入りやすくなり、硬くなってしまった場合、その傷によって生まれた隙間から、微生物や刺激物が侵入して炎症などの皮膚トラブルを招きます。少しの刺激で皮膚表面がわれてしまうドライスキンは、摩擦によってはがれやすくなります。そのため、体位変換の際に持ち上げた部分がこすれて、赤みやひび割れを起こすこともあります。ドライスキンになると、刺激を感じやすいためかゆみをともないます。かきむしったりこすったりすることで皮膚が傷ついてしまうので、ワセリンをやさしく塗って乾燥を防ぎましょう。

  • 褥瘡ケアとスキンケア

若い人であれば、ワセリンを肌の上で広くのばしながら皮膚全体を覆うように塗付するのが通常の使用方法ですが、高齢者の場合は、少しのひっぱりや摩擦で皮膚がはがれてしまう事があります。そのため、皮膚に水分がいきわたる入浴後に、水をはじいて皮膚の中に水分をとどめておくためにワセリンを塗布します。皮膚をやさしくマッサージすることで、硬くなった皮膚を柔らかくすることもできるので、全身くまなく塗ることができるのが理想です。しかし、皮膚が擦れないことを優先してケアしてあげなければなりません。特に、皮膚が薄い骨突起部は皮膚が薄く、筋肉や脂肪も少ないためマッサージは控えるべき部位です。マッサージをすることで反対に褥瘡や皮膚ずれを起こすことになってしまいます。

  • むくみケアも慎重に

寝たきりでオムツを使用する際、特に気をつけたいのが、ふともも付け根部分です。皮膚が重なり合った状態が続くとふやけてしまい、炎症や赤みが発生しやすくなります。また、重力によって体の下部がむくみやすくなります。むくみがあると褥瘡ができやすくなるので、臀部や足元を清潔にしてからワセリンを塗りましょう。病院着やオムツの締めつけにも気をつけましょう。数か所締めつけられると、体の水分が滞り、浮腫がひどくなる場合があります。締めつけた部分がこすれてかゆみがともなうと、褥瘡が起こる原因にもなりますので、むくみや擦れに細心の注意を払いましょう。