理学療法士の運動療法 どの範囲までできる?

PTと呼ばれる理学療法士の運動療法が適用できる疾患はどのようなものがあるのでしょうか。理学療法の対象となる疾患の大部分に運動療法が適用できるのでしょうか?
今回は具体的な疾患名とともに、有効な運動療法について一緒に見てみましょう。

■脳血管障害

脳出血や脳梗塞、くも膜下出血などの患者が対象となります。高齢者の割合が多いのですが、近年では、くも膜下出血は比較的若年の患者が多いのも特徴の一つです。
脳出血や脳梗塞などによって身体に麻痺が生じた場合、自分の思い通りに身体を動かせなくなってしまう事例があります。
また麻痺が生じると筋肉や関節が固くなりすぎたり、反対に筋肉が弛緩し関節周辺に負担がかかるケースがあります。
その際は運動療法によって、筋肉をもみほぐすなど身体を動かしやすい状態にし、再び整えていく運動機能・高次脳機能など改善を図るリハビリテーションが有効となります。

■整形外科疾患

高齢者は骨折対象となる実例が多く 腰痛症、肩関節周囲炎、各種ヘルニア、変形性関節症、骨粗鬆症、運動器不安定症、各種障がいが対象となります。
初期治療には、鎮痛剤、マッサージなどが痛み止めで効果がありますが、炎症や不動期間の長期化により動かしにくくなった筋力・腕力・神経の滑りに対して柔軟さを改善する運動療法もあります。
理学療法士が直接行うこともありますし、患者さんに柔軟運動の指導をすることもあります。

■循環器系疾患

心不全や心筋梗塞の患者さんで、身体状態がひとまず落ち着いた方が対象となります。年齢層は50代—90代と幅広く、生活習慣病を抱える方に多いのが特徴です。
血液やリンパ液の働きが悪くなっている箇所に対して、解剖学的な視点から関節可動範囲および不動範囲のリンパマッサージも有効です。

■呼吸器系疾患

慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫の患者さんが対象となります。呼吸理学療法が有効で、6分間歩行による筋力、骨格筋の強化、動作効率の改善など作業療法的なアプローチも含みます。

■代謝系疾患

糖尿病 肥満症のほか、腎障がいの方が多いのが実情です。有酸素運動や筋力トレーニング 食事療法などがあります。

■がん疾患

各種がんにより入院の長期化が想定される患者さんに対して、筋力低下などの廃用症候群予防で運動療法を行うこともあります。
運動の介入方法は多様であり、肩・腕・肩甲骨の抵抗運動、姿勢運動、全身運動や調整運動、肩回り運動、リンパ浮腫の予防運動など 乳がんや頭韻部がん患者の治療に運動療法が有効です。

■認知症

運動によって脳細胞が活性化され、認知機能維持・改善に有効という考えがあります。関節可動域訓練 筋力増強訓練 ストレッチ 有酸素運動 ラジオ体操などが有効です。
運動療法には 色々な手技・方法があります。

■持久性運動

筋力だけでなく、心肺機能基礎体力の 向上を図ります。低負荷高頻度の動きが推奨され、トレッドミルやエルゴメーターといったリハビリテーション機器が使用されます。

■まとめ

運動療法の狙いは、対象者の疾患や障がいのタイプ、時期によって微細に変わってきます。また患者さんの心身や生活様式に寄り添い、時には心のケアも必要となるでしょう。
健康維持に大切なのは「運動」「栄養」「休養」です。