褥瘡ができる仕組みを理解していると、発生リスクを軽減することができます。
しかし、褥瘡が起こりやすいか起こりにくいかは、その患者さんの状態や介護を担う手、また地域や施設などの連携など、取り巻く環境が複雑に絡んできます。
まずは、予防という観点から褥瘡が起こるリスクを取り除くことを考えていきましょう。
発生するリスクは、以下のような4つの「ない」に通じています。
〇褥瘡が起こる部位の血流が良くない
これは、直接的な褥瘡発生リスクとなる「血流阻害」です。
上皮や皮下組織周辺の血流が低下すると、組織が壊れて形成します。
圧迫された部分の組織周辺にある毛細血管に、十分な血液が遅れなくなり、組織が阻血、壊死状態になってしまい、潰瘍が生じます。
外力によって損傷した皮膚や組織は、血流によって運ばれる必要栄養素によって再生しますが、血流が十分ではない部分は、栄養供給がなされず修復できません。
反対に、いったん血流が阻害された部分の圧迫が解け、一気に血流が戻ることで生体炎症反応が起きて組織を障害することもあります(再灌流障害)。
〇褥瘡リスクが最も高い 患者の身体が動かない
自分の身体を思い通りに動かすことができれば、痛みやしびれを感じるたびに、少しずつその状況を回避する動きを自らとることができます。
しかし、体の一部または全部を思い通りに動かせない場合、局所の傷みやしびれを感じたら、誰かの手を借りて圧を取り除くことになります。
この除圧までの時間が長くなると、褥瘡が発生するリスクも高まります。
〇皮膚の潤いが少ない ずれ力で発生する褥瘡
歳をとると、体のいたる部分でシワが目立ってきます。
加齢によって皮膚の保湿機能が低下し、皮膚が固くなって潤いが不足した状態が身体のシワです。
保湿力が高い皮膚は、衝撃を受けても跳ね返す弾力がありますが、固く乾燥した皮膚は外力の影響を受けて傷つきやすくなります。
乾燥皮膚は、少しのずれや圧迫、引っ張りで組織が壊れてしまい、修復するまでに時間が掛かります。
保湿クリームや外用薬でしっかりとケアしましょう。
〇体のむくみが改善しない 疾患もリスクを高める
潤いがない皮膚は褥瘡の発生リスク要因ですが、皮下組織に過剰な水分が溜まる浮腫も褥瘡を起こす原因の一つとなります。
身体に起こるむくみは、余分な水分や老廃物をキチンと体外に排出する処理が、体の中で行われていない状態です。
夕方になると現れる体の浮腫みは、同じ姿勢で過ごす人に多いですが、これも血行の良い状態を作ることで改善されます。
ただ、身体機能だけではなく、持病や基礎疾患によって浮腫が起こる場合もあります。
全身の状態を観察して治療を行いつつ、同時に褥瘡の発生を防ぐ取り組みが必要です。