褥瘡の状態は表面だけで判断しない DTIとは

外見が大した傷に見えなくても、実は深いところにまで進んでしまう危険をはらむのが褥瘡の恐ろしさです。寝たままの姿勢を続けていると、特に仙骨部分で褥瘡を起こしやすくなり、創傷面も大きくなりがちです。
全体的に浅い床ずれが起こったのかと思える創のしたで、ポケットを形成するような深刻な状態になっている可能性もあります。


○軽度にみえるDTIとその診断
表面的に浅い褥瘡のように見えて、実は深部に達する損傷の激しい褥瘡だったというケースが往々にしてあります。
本来なら徐々に進行していくと考えら得ている褥瘡は、その進達度を4段階のステージであらわすのが一般的です。しかし時に、皮膚表面から深部に向かって進行していくというレギュラーなケースではなく、皮膚表面よりも先に皮下組織や筋肉組織がダメージを受けることがあります。その状態をDTI(深部組織損傷)といいます。

●DTIと創の急激な悪化
DTIのような、皮下組織のダメージはどのようにして起こるのか。それは、圧迫による虚血が大きな要因となります。
皮膚は、ずれ力と圧迫による血流不足が原因となって、発赤・水疱化し損傷するという順序で通常進行していきます。皮下組織や筋組織は、圧迫による虚血に対する組織耐久力が実は皮膚よりも低いのです。
皮膚表面が創傷し、褥瘡が確認された後に急激な容態の悪化が起こるときはDTIが生じている場合が多いです。

●DTIの処置とタイミング
DTIの褥瘡は、急性期褥瘡(短期間で深部に達した進行の早い褥瘡)である場合が多く、その状態は安定しません。発赤や浮腫、水疱、浅い潰瘍などの病態が次から次に短期間で現れるため、観察は注意深く毎日行わねばなりません。在宅で発症したDTIは、入院してその経過をしっかり把握し、容態が安定するまではきちんと保護をして外科的処置を行わないのが原則です。
無理に化膿した部分を刺激したり外力を加えたりすると、褥瘡だけではなくその周辺組織や皮膚を剥離させてしまいます。

●褥瘡を画像診断で確認する
どれほどの深部に損傷が起こっているかを確認するには、エコー検査(超音波画像診断)が客観的な判断をしやすく、有効だと考えら得ています。
超音波画像を見れば、皮下組織の層構造や筋膜が不明瞭で、損傷箇所が黒く映し出される為、DTIの診断がしやすくなります。
また超音波を用いた画像診断の場合、創傷部分に大きな刺激を与えずに、タイムリーな診断が可能だというのがメリットでしょう。経過の観察も容易で、データとしてその画像情報を共有できる利点もあります。