褥瘡が起こる原因について、またその処置や完治に向けての方法については、各医療機関や支援サービス、施設などで取り組みを行っている様子を見ることもあります。
しかし、予防に対しての周知や取り組みは確認しづらく、成果もわかりづらいため、その介護や看護を行う人によって対処も様々です。
褥瘡が起こるメカニズムを理解し、予防観点から褥瘡ケアを行う場合、皮膚の状態を正しく判断し、スキンケアに注視することが大切です。
○骨突出部の周辺皮膚観察を念入りに
高齢者になれば、加齢に伴って皮下組織のうるおい成分が減少し、張りがなくなってきます。皮下脂肪も減少し、体全体の皮膚が固く、たるみを帯びてきます。
ずれ力が起これば、一方向に引っ張る力が働き、皮膚が破れ(壊れ)やすくなった状態が続くと考えておきましょう。さらに、硬い骨が出っ張った部分は、擦れの起こり方も激しく、すぐに皮膚が傷ついてしまいます。
骨が突出した部分は、擦れる力によって赤くなったり、皮下組織が壊れて水疱や斑点が表れやすくなります。また、皮膚のたるみによって、骨から少し離れた部分でずれ力が起こり、床ずれを引き起こすこともあります。
突出部分だけではなく、ケアの際には全身の状態を確認するようにしましょう。
○褥瘡を予防するための乾燥ケア
乾燥した皮膚は、外的刺激を受けやすく、褥瘡に限らずかゆみやひび割れ、皮膚のめくれが起こります。
入浴は、乾燥した皮膚へ水分を浸透させることができる有効な機会です。弱酸性の石鹸を使って体の汚れを落とし、やさしくタオルに水分を吸い取らせるようにして拭きます。
粉をふいたようなドライスキンや、表面がつるんとしてテカリのある皮膚は、乾燥が進んでいると想定し、水分保持を促す保湿ローションや油脂性軟膏、クリームを使用します。
○体の状態と皮膚の保護方法
皮膚のバリア機能が減少すると、刺激によって褥瘡以外の外傷を招きかねません。皮膚状態の観察は、あらゆる損傷の予防につながっています。
●刺激を予防するには
締め付けがきつい衣類(パジャマの腰ゴムなど)の使用を避け、ずれ力を起こさないように配慮しましょう。
柔らかいシーツを使い、下肢や腕などはフリースで包むと、保湿と皮膚の保護を同時に行えます。
拳上の際は、パウダービーズ素材のような柔らかい素材のクッション、ウレタンフォームの枕を使用するという方法もあります。
褥瘡ができた場所や、皮膚の外傷を起こして皮膚保護材や傷テープを使っている場合には、周辺の皮膚を引っ張らないように、博愛の心を以て剥離しましょう。接着面をはがしやすくする工夫を取り入れながら、刺激を最小限にとどめることが大切です。