高齢者介護施設における感染症対策

抵抗力の少ない高齢者が入所・通所する介護施設において、新型コロナウイルスに代表される感染症の予防対策は、いまや最重要の衛生管理業務です。
利用者の方や介護スタッフをまもるための感染症対策を今一度確認しておきましょう。

感染症対策の基礎知識

感染症が発生するには、その原因となる細菌やウイルスなどの病原体を持つものや人、病原体が宿主に入りこむための感染経路、そして特に抵抗力の弱い高齢者や乳幼児、病人などの感染を受ける可能性のある人のつながりが必要となります。
病原体・感染経路・感受性宿主の3つを、感染が成立するための3大要因といいます。

感染の予防対策として
〇消毒などによる病原体(感染源)の根絶
〇早期に患者を発見すること
〇衛生管理を徹底して外的環境からの病原体の侵入を防ぐこと
〇抵抗力を高めること が、とても重要となります。

感染症対策の3つの原則

感染症発生に3つの要素があるように、感染症予防対策にも3つの原則があります。サービス提供者として以下の内容を把握しておきましょう。

感染源の排除

感染症の原因となる可能性がある病原体(感染源)は、次のようなところに存在しています。

1)血液や涙などの体液(汗を除く)

2)粘膜面

3)傷がある皮膚・発疹のある皮膚・発赤のある皮膚・やけどのある皮膚など正常でない皮膚

4)上記に触れた手指 1、2、3は素手で触らず、必ず手袋を着用して取り扱います。また、手袋を脱いだ後は、手指衛生(手洗いやアルコール消毒など)が必要です。

感染経路の遮断

3原則のうち、最も重要な取り組みとなるのが「感染経路の遮断」です。病原体を「持ち込まない」「拡げない」「持ち出さない」という3つの配慮が必要となります。
主な感染経路は空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染となります。 感染源は、介護施設の利用者だけでなく、スタッフや委託業者など、施設を往来する「人」によって持ち込まれています。
そのようなことが無いよう留意することが重要です。

宿主の抵抗力の向上

介護施設を利用されている高齢者や基礎疾患のある方の免疫力は低下しているケースが多いものです。感染症に対する抵抗力を向上させるには、日頃から十分な栄養や睡眠をとるとともに、予防接種によりあらかじめ免疫を得ることも重要です。

感染症における介護施設ができる予防策

空気感染への予防策

〇十分な換気をおこなう

〇飛沫感染する病原体では接触感染も起こりうるため、接触が多い共用設備の消毒をおこなう

飛沫感染への予防策

〇原則、個室管理もしくは集団隔離

〇患者と他の利用者を隔離できない場合は、ベッドの間隔を2m以上あける。もしくは、ベッドの間をパーティションやカーテンで仕切るなどの工夫をおこなう

〇居室に特殊な空調は必要なく、窓をあけたままでも可

接触感染への予防策

〇共用タオルの使用は禁止し、ペーパータオルなどを代用する

まとめ

介護施設における感染症対策は、感染源を持ち込まないことが第一歩となります。そのためにも、スタッフ個々の心がけが重要となりますので、感染源を避け、手洗いなどを励行して、持ち込まない、拡げないよう徹底することを今一度確認しましょう。