ずっと寝たきりの姿勢をとっておかなければならない疾患がある人にとって、治療目的とはいえ、寝たままの体勢はとても辛いものです。
特に、マヒがあったり手術をしたあとの痛みが残っていたりすると、体を動かすことに恐怖心もあり、自分から率先して体を動かすことをためらってしまい、その結果筋肉量が減少し、思うように体が動かせなくなってしまうこともあります。
長期療養の患者が気をつけなければならないのが、寝たきりの状態が続くことによって体力と気力がそがれてしまう、廃用性症候群です。そうなる前に、起き上がる、手足を動かすなど、動きを率先して促すことができる環境を整えるのが有効です。
○自分で起き上がるためのアシストグッズ
福祉住環境を整えるという観点から、自立した生活を後押しするグッズを率先して導入していきましょう。
まずは、ベッドです。寝たきりの状態が長くなると、自分で体を動かそうという意欲が低下してしまいます。しかし、思うように体が動かせないとなると、座位をとるという動き一つにしても、相当の体力と気力を消耗します。
自動で背部分が稼動するリクライニング式のベッドがあれば、スイッチ操作だけで寝たままの姿勢で無理なく座位をとることができます。連動して膝部分を持ち上げる機能がついた全自動式は(通常のリクライニングベッドよりも高額ですが)座った姿勢を楽にしてくれるため、長く起き上がった状態を維持することができます。
○褥瘡予防としても有効 ハンドクッション
ずっと寝た姿勢が長く続くと、関節が堅くなり、体の伸縮が難しくなります。しゃがんだり、膝や股関節を曲げたりするという動作が激減する寝たきりの姿勢は、全身の硬直を進行させてしまいます。過度な安静は返って身体機能維持のために良くありません。
まずは、関節を刺激するという目的から、手のグーパー(握って開いて)を習慣にしてみましょう。からだを動かすことができるという自信にもつながります。
手や指先の動作は神経を刺激し、感覚を維持するためにも効果があるといわれています。脳に刺激を与えるこの動作は、やわらかいガーゼやタオルを用いて行えますが、指の動きを自覚しながら行うために、ハンドクッションを利用すると良いでしょう。
○体位変換マット・クッションで起き上がる
特に半身麻痺の人は、体半分の感覚が残存しているため、体位変換しても自分で臥床ポジションを楽な姿勢に動かしてしまいます。感覚が失われたほうの圧迫がひどくなり、気がつけば褥瘡を発症してしまうということもあります。
楽に体位変換を行いながら、その動きをこまめに変えるサポートをする体位変換クッションの傾斜部分を使えば、半身の麻痺患者もトレーニングして自分で起き上がれるようになる可能性もあります。リハビリをして筋肉と感覚を取り戻し、補助グッズを使うことで、自立した生活を目指すこともできます。
生活の拠点である自宅から、離床の妨げになるものや障害を排除し、なおかつ自分の体を動かすために必要な支えや手すりを設置しましょう。まずはベッドから起き上がることから、あせらずゆっくり継続してリハビリしていきましょう。