まだまだ少ない言語聴覚士 ~介護の分野で高まる需要~

言語聴覚士の名称は知っていても、どのような資格でどんな職種なのかご存知ない方も多いことでしょう。
今回は、まだまだ資格保有者の少ない言語聴覚士が、介護現場で需要が高まっている理由について解説していきましょう。

■言語聴覚士の現状

言語聴覚士が国家資格になったのは1997年であり、他のリハビリ職である理学療法士や作業療法士と比較するとまだ新しい資格です。
また、言語聴覚士の資格保有者数も2018年現在で約31,000人であり、作業療法士約70,000人、理学療法士約100,000人と比べて少ないことがお分かりでしょう。

■介護施設での言語聴覚士が行うリハビリの内容

高齢者は加齢に伴って、聴覚障がいである構音障がいや老人性難聴、または食べる、飲み込むことができなくなるような障がいには、摂食障がい・咀嚼障がい・嚥下障がいなどがありますが、言語聴覚士はそのような障害を持った方に対して、維持や改善のためのリハビリを行う役割を担っています。

■介護施設で言語聴覚士の需要が増える利用とは?

皆さんもご存知の通り、テレビやその他のメディアなどで話題になっている「2025年問題」ですが、厚生労働省の推計では団塊の世代が75歳の後期高齢者になり、65歳以上の高齢人口が約3,700万人になり、日本の人口比率からすると30%にあたります。
それに伴い認知症高齢者も増加し、ますます言語聴覚士の需要が増えることでしょう。

■介護業界はすべての職種で人手不足である

介護の分野では、介護士や看護師の不足が懸念されていますが、リハビリ職の分野でも大幅な人手不足が予想され、言語聴覚士もまた人手不足になることが予測されます。

現在でも医療・介護の分野で人手不足ですが、特に介護施設での言語聴覚士の求人が増えています。今後、高齢者が増えることでその需要は増えることでしょう。

■母の失語症とリハビリに立ち会って思ったこと

約20年前に、私の母は脳梗塞により「失語症と片麻痺の障害」になりました。入院していたのは、総合病院であったのですが、当時は言語聴覚士が国家資格制度になって間もない頃で、その病院には、男性の言語聴覚が配置されていました。
しばらくして病状が安定するとリハビリがはじまり、私も何度か立ち会う機会がありました。

最初は発語ができない母でしたが、約半年間のリハビリで「たどたどしい」発語で会話ができるまでに回復しました。

その当時、私は介護福祉士として介護施設で働いていました。私が勤めている施設にも同じ失語症の利用者が数名いたのですが、施設には理学療法士のみ配置されていて、失語症のリハビリはありませんでした。
母の失語症が改善したのを目の当たりにして、「私の勤めている施設にも言語聴覚士がいたら、失語症が改善できるのでは?」と、強く感じました。

しかし、当時はまだ言語聴覚士は少ないうえに、医療機関に就職する人が多く、介護施設に就職する人は少ない現状でした。
また、言語聴覚士の知名度も低く、その役割や重要性も確立されていない時期でしたから、仕方のないことだと思います。

今考えると、言語聴覚士が少ない時期にその病院に入院でき、何も話すことができない状態から会話ができるまで回復した母はとても運が良かったと思います。

■まとめ

言語聴覚士はまだまだ資格保有者が少なく、人手不足であることが現状です。高齢化社会の現在の日本、特に介護業界からニーズが高まっています。
今後、介護施設での高齢者介護において、言語聴覚士が行うリハビリが重要な役割を担うことでしょう。