介護職員の業務範囲はどこまで?爪切りはOK?

2020年7月2日に政府の規制改革推進会議でまとめた、介護サービスの医行為でない行為について、介護職員が安心、かつ、円滑に実施できるよう講ずるべきであると公式文書で発表しています。
では、医行為でない、介護職員ができる業務範囲はどこまで許容されているのかを見ていきましょう。

介護職員が行える医療的ケア

施設での介護や在宅介護に従事する介護職員は、医療行為をすることはできません。しかし、高齢者や障がい者の介護をしていると、歯磨きや体温測定など、その行為が医療行為になるのかという、判断に困る事態が起きていました。

このような混乱を避けるため、厚生労働省は平成17年7月、原則として医療行為にはあたらないと考えられる項目を明示しています。
【体温測定】水銀体温計・電子体温計・耳式電子体温計による脇下、外耳道での測定

【血圧測定】自動血圧測定器による測定

【パルスオキシメータの装着】新生児以外・入院治療の必要がないもの・動脈血酸素飽和度の測定を目的とするもの

【軽微な切り傷・擦り傷・やけど等の処置】専門的な判断や技術を必要としない処置(汚物で汚れたガーゼの交換を含む)

【医薬品の使用の介助】褥瘡の処置を除く皮膚への軟膏の塗布・湿布の貼付・点眼薬の点眼・一包化された内容薬の内服(舌下錠を含む)・坐薬挿入・鼻腔粘膜への薬剤噴霧 ※条件を満たす必要があります。

【つめ切り・やすりがけ】爪そのものに異常がないこと・爪周囲の皮膚にも化膿、炎症がないこと・糖尿病などの疾患で専門的管理が必要でないこと

【日常的なオーラルケア】歯ブラシや綿棒または巻き綿子などを用いて、歯・口腔粘膜・舌に付着している汚れを取り除き清潔にする。重度の歯周病にかかっていないこと・柔道の歯周病などがない場合

【耳垢の除去】耳垢塞栓の除去を除く

【ストマ装具のパウチにたまった排泄物をすてること】肌に接着したパウチの取り替えを除く ◎自己導尿の補助のためのカテーテル準備、体位の保持など

【市販の使い捨て浣腸器による浣腸】使用する浣腸器は条件があります。

平成24年4月から介護職員ができる業務範囲が広がった

平成24年4月から、社会福祉士及び介護福祉法の一部改正により、一定の研修を受けた介護職員は、医療や看護の連携による安全確保が図られていること等の一定の条件の下で、県の登録を受けた事業者において、医療行為である喀痰吸引等の行為ができるようになりました。

対象となる行為は
【痰の吸引】口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部
【経管栄養】胃ろうまたは腸ろう、経鼻経管栄養 介護職員が痰の吸引、経管栄養を行うには、一定の研修があります。

介護職員として活躍していくためには、喀痰吸引等研修を受講し、認定特定行為業務従業者認定証を申請する必要があります。
また、医療的ケアができるようになったからといって、介護職員が一人で携われる業務をこなそうとするのではなく、サービスを受ける方には、医師や看護師、理学療法士、薬剤師など様々な立場の専門職が関わっています。
医療的ケアの方法や注意点など、疑問があればすぐに専門職に相談ができるよう、十分な連携が取れるようにしましょう。

まとめ

医療的ケアが今の介護の現場でニーズが高まる中、介護職員の業務範囲をどこまで認めるかは議論されていくことでしょう。
その中で、医療的ケアを実施する際には、少しでも普段と異なることがあれば、医師や看護師に速やかに連絡するなど、常に連携が必要とされてきます。