保健師不足と高齢者問題や相談援助の複雑化

保健師とはどの様な仕事をしているのか、余り知られていない職種ではないでしょうか。保健師の多くは行政保健師であり、公務員としての仕事の8割を占める市町村役場・保健所など行政で働いています。
その他にも、企業などで働く産業保健師や学校の養護教諭として働く学校保健師もいます。今回は、行政保健師が不足しているその背景と原因について解説していきましょう。

■保健師の仕事内容について

行政保健師の仕事内容は、一般にはあまり知られていませんが、主に市町村の窓口業務です。生活困窮者や健康に問題のある方の相談、地域の集団検診、地域で暮らす幼児から高齢者の心身の健康に関する相談を中心とした支援活動や、特定保健指導、必要であれば家庭への訪問も行ないます。
保健師の仕事の内容は、地域住民の健康づくりの相談・援助・指導・助言をする仕事だといえるでしょう。

■保健師が足りない背景と原因

保健師が不足する背景には、高齢者人口の増加と大きく関わっています。2025年には高齢者人口(65歳以上の高齢者)が3500万人になることが予想されています。
ではなぜ、高齢者が増えることで保健師が不足するのでしょうか。

保健師は地域全体の高齢者に対する介護予防も担っているからです。介護保険の趣旨は高齢になっても、介護が必要にならないように日頃から健康や体力の維持、増進に努めることといわれていますので、保健師本来の仕事の役割である予防医療や予防介護の知識が必要になってきます。
それに伴い保健師の役割も在宅の高齢者の人数が増えると、それだけ対象が増えるということです。

■保健師の役割と仕事

①最近増加している児童虐待などの対処も重要な仕事の1つです。

②障害者の病院から在宅への移行を促進するため、支援することも重要な仕事です。

③最近では、うつ病やその他心の病気やメンタルに関する相談も増加してきています。ストレス社会で様々な悩みや問題を抱える人の相談支援も重要な仕事です。

④生活困窮者の相談支援も重要な業務です。何らかの理由(病気やケガ・障がいなど)で仕事ができず、経済的な面から生活に支障をきたしている人の相談支援をすることも大切な仕事です。

■まとめ

保健師が足りない原因についてみてきましたが、大きな要因として現在の日本が抱える「高齢者問題」という、大きな課題が背景にあることがお分かりになったことでしょう。
保健師の業務範囲の広さや、問題の複雑さ、対象者の多さに対応が追い付いていないのが現状です。

「高齢者問題」は避けては取れない問題です。それ以外にも「障がい福祉」なども、今後、保健師が対応していく相談も多くなり、不足することが考えられます。
そのため保健師の仕事の範囲や対象となる相談援助などの増加を考えると、保健師不足を解消するためには「保健師の増員・安定した確保」が重要となるでしょう。