臨床の現場では、寝たきりの原因となる疾病の治療処置と並行して、床ずれの予防とケアが必要になります。持病や疾患の具合によって、褥瘡が発生する場所やリスクは患者ごとに異なりますが、発生しやすい局所(好発部位)を知っておくだけで、その部分の圧迫を避け、ずれ力を抑えるための体位変換をしやすくなります。
また、寝たきりで過ごす患者には、体圧分散マットレスを使用することが多いですが、患者にそのマットレスが適切かどうかを適時判断しておかねばなりません。
〇床ずれの好発部位に共通する特徴は
床ずれが起こる直接的な原因は、外的なずれ力と圧迫です。皮膚組織が損傷し、一見すると赤みや水疱が発生しているだけのように感じるかもしれませんが、赤みが引かない・水疱が広がる(破裂して滲出液がでる)場合は、慢性化する可能性が高いので注意が必要です。
体圧を点で受けやすい部分、特に骨が突出している箇所や、体のラインで凸凹がはっきりしている部分が床ずれを起こしやすい「好発部位」です。後頭部、肩、肩甲骨、仙骨、骨盤側部、踵がその代表例で、骨が突出している箇所を重点的に経過観察しましょう。
〇好発部位の除圧と体圧分散マットレスの効果
骨の突出部分にかかる体圧を分散させるマットレスを使うと、通常のマットレスと異なり、点や面で外力がかかる部分の圧を軽減することができます。しかし、体圧分散マットレスは素材や硬さによって効果が異なります。患者の身体状態と残存機能によっては、導入したマットレスが合わなくなることもありますので、定期的に体圧測定を行いながら変更も視野にいれておかねばなりません。
●好発部位をカバーするマットレスを
体圧分散マットレスは、素材や効能によって価格も変わります。褥瘡を心配するあまり、見守る側としては高級、高性能のマットレスを使ってほしいと願うかもしれません。しかし、過度な装備のマットレスを導入しても、やはり定期的な体位変換や観察は必要です。また、寝たきりで快適な状態をキープすると、残存機能を生かす患者の活動機会を奪ってしまうことにもなります。
万人に高性能のマットレスが良いわけではありません。患者の機能や疾患、創傷か所に合わせたマットレスの導入を検証して、最終的に完治や離床、温存を目指すという意識を、介助する側が持ち続けていきましょう。
寝たままの姿勢が長くなると、寝具に接地した褥瘡の好発部位に、痛みやしびれを感じ始めます。健常な人であれば、自力で寝返りを打つ事ができるでしょう。これは体に起こる違和感を自ら解消しようとする無意識の行為です。ただし、療養中の為に体の一部を固定したり、神経麻痺があったり、自力で体位を変えることができない人はその違和感を解消する事が出来ません。
看護や介護を行う人が、常に全身の皮膚状態と異変の有無を確認し、患者が違和感や痛みを感じる事なく快適に過ごせる状態こそが、床ずれ予防につながると言えるでしょう。