全身の血の循環を良くすることが大切 褥瘡ケアの第一段階

寝たきりの姿勢が長くなる、また移動に車いすを使用する。このように自立した生活を送ることが困難な高齢者や入院患者は、常に褥瘡リスクがともないます。若い人でも、数週間の入院生活で踵や仙骨部分に褥瘡を発症したという事例は少なくありません。痛みを伴い、一度発症すると完治までに長い時間を費やさねばならなくなる褥瘡(床ずれ)を予防するためには、横たわった同じ姿勢を極力減らし、体全体の血流を良くすることが効果的です。

○血の循環が悪くなると発症リスクが上昇

褥瘡が起こる直接的な原因は、一か所または数か所を同じ姿勢で圧迫し続けることによる血流不足です。血の循環が悪くなってしまうと、圧迫箇所がまず赤くうっ血したように変わります。その次に赤黒いあざのように進行したり、水疱が現れたりします。これはずっと押し続けた患部の血流不足により、皮膚と皮膚下の筋肉に充分な血液がめぐらず栄養や水分を供給できないため、損傷を起こしてしまう体の変化です。

●骨と皮膚が近い箇所は特に注意を

皮膚の圧迫や軽い擦れがあるだけでも、あっという間に褥瘡は起こります。皮膚の下に脂肪や筋肉がある臀部等は、それがクッションとなります。すると、圧迫の傷みやしびれが起こる範囲が広くなりますので、重症化するまでに時間を稼ぐことが可能です。しかし、骨と皮膚の下に筋肉や脂肪がつきにくい肘やかかとは、一度褥瘡を起こすと完治しづらくなります。皮膚に充分な血流をいきわたらせるのが難しくなるためです。

●関節部分 血の循環

圧迫を逃がしても、一時骨や皮膚部分に痛みが残るほど、褥瘡になりやすい骨突起部は押しつけられやすいのです。そこで、皮膚の損傷に進行するまでに、皮膚にある血管の中の血の循環を良くするためのマッサージを行うと良いでしょう。しかし、皮下脂肪や筋肉が無い箇所の皮膚は、乾燥しやすく、きりきず・擦れを起こしやすいという特徴があります。乾燥した皮膚に潤いを与えながら、外部刺激や水分蒸発を防ぐために白色ワセリン等を使って、マッサージをしましょう。外用薬や保湿クリームを「塗る」のではなく、軽く押さえながら浸透させるようなイメージを持つと、過度に力を入れて擦らずに済みます。そして、オムツ交換や体位変換の時間に、処置やケアを行った流れで温かいタオル等を患部周辺に充てて血のめぐりを良くしてあげましょう。熱すぎるタオルでは、患者がやけどしてしまう事も考えられます。ひと肌程度の40度弱にタオル温度を設定して、患部周辺を温めるように軽く拭いてあげるだけでも、充分に効果が期待できます。