要注意 寝たきりの高齢者に起こる体重減少と低栄養

活動している体は、エネルギーや栄養となるものを欲します。食事を十分にとって栄養や熱量となるものを補給すれば、継続的に(恒常的な老化は起こりえますが)その体を維持して健康な毎日を過ごすことができるでしょう。

しかし、身体を動かす機会が減ると、消費カロリーそのものは基礎代謝で必要なものの、様々な意欲がそがれ、それは食欲にも表れます。食べたい欲をかき立てられる嗜好品を好み、身体に必要な栄養が偏ってしまうことで、低栄養状態になってしまう可能性をはらんでいます。

低栄養状態に陥る前に、寝たきりの人の体重観察を継続しましょう。体重減少は低栄養の兆候でもあります。少しでも残存機能を生かした、人間らしい生活を送るためにも、体重コントロールは重要です。

〇寝たきりの人に多い体重減少の原因

寝たきりの状態になる人は大きく分けて2タイプ。一つは疾患(病気)によって身体が自由に動かせなくなることによるもの、もう一つは加齢によって身体機能が低下し、自立した生活を営むことが難しくなる故の寝たきりです。

病気が発症する前は健全に自立した生活を送っていた人は、元の生活に戻ろうとする目標意識を持つことで、寝たきりの状態を脱しようと努力することもできるでしょう。しかし、高齢者の場合は、徐々に衰えた体を短期間で活性する目標を持つのは辛く、現実的ではありません。

加齢によって、消化器系機能の働きも低下し、十分な食事を経口摂取することも難しくなります。食事量そのものが減りつつ嗜好割合が増えることで、栄養バランスが整えづらくなり、隠れ肥満や栄養不足が起こって体重も減少する傾向が強まります。

〇体重減少で注意すべきはたんぱく質不足

人間の身体を維持するうえで、必要な栄養素は「糖質」「たんぱく質」「脂質」です。この三大栄養素をバランスよく摂取するべきだということは、多くの人が理解しています。

栄養バランスが崩れることで、肥満になり健康被害が現れやすくなる点に注意をする人は多いですが、寝たきりになると、基礎代謝のために必要な糖質とたんぱく質の不足のほうが実は深刻です。

たんぱく質は、体の組織の形成や再生になくてはならない栄養素です。このたんぱく質が不足すると、体重減少だけでなく、骨や皮膚、筋肉、血管が痩せてもろくなってしまいます。体内組織がもろくなることで、免疫機能が低下し、感染や炎症を起こすリスクが高まるのです。

寝たきりの人にとって痩せ・体重減少は、最悪の場合「死」に直結する危険な状態を招く可能性があります。意識をしっかりと持ち、寝たきりでいながらも人間らしい生活を営むためには、体重と栄養のコントロール、そしてたんぱく質の摂取が不可欠です。