体に外傷ができれば、その部分に薬を塗布し、傷口を広く覆って経過を見るというのが一般的でしょう。慢性化しやすい褥瘡の場合も、基本的な処置方法は同じです。
しかし、再発や創の進行を止めるための処置という見方も必要です。創傷部分の治癒を目指しながら、今以上にひどくならないための処置に大切なのが「保護と固定」です。
〇褥瘡は外力によって起こる創傷
皮膚の損傷が起こるシーンを想像してみてください。鋭利なもので切ったり、凹凸が激しいものでこすったりしてできる切り傷や擦り傷が、すぐに思い浮かぶでしょう。
外傷は、その傷ができる理由は一過性であり、瞬間的なものです。しかし、褥瘡の創傷は、継続的な圧力やズレといった継続的な外力によって起こります。
褥瘡の創傷状態を良くするためには、その傷部分だけに注意を促すだけでは足りません。褥瘡が起こる環境の整備が直接的に影響をすることを念頭に置いておきましょう。
〇創傷部分の保護が大原則
褥瘡の処置を行う場合、まずは創を保護するところからスタートします。
ただ、創傷部を覆ってしまえばいいというわけではありません。褥瘡がおこる原因となる外力から、傷を保護してなおかつ外力を更に創傷に与えない処置が求められます。
寝たきりの人やマヒの患者に多い圧迫やズレ力が、創傷に直接及ばないように、できる限りの配慮をせねばなりません。
これは、単純に体圧分散寝具を使う・クッションをあてがうというものではなく、定期的に姿勢を変えて、また適切なポジションを保持することも、創部分の保護につながるという意識を持っておきましょう。
創傷周辺の皮膚とバンテージを用いた処置
褥瘡が起こりやすい皮膚は、乾燥して潤いや弾力が無く、たるみがあり、引っ張り力に弱いという特徴があります。わずかなズレ力の発生や、楽な姿勢に動こうとする患者のクセやベッドの向き(人の動きや会話をしやすいポジション)によって、一定方向に引っ張られる外力が、褥瘡の創傷面積を広げる可能性もあります。
褥瘡の創傷部分周辺の皮膚にたるみがある場合は、バンテージ(テーピング)やレストン(厚みがあるクッションのようなもの)を用いて、創の固定を行います。
ただ、周辺の皮膚にハリを作るのではなく、どちらの方向にむけて皮膚を引っ張るか、結果どのように創を固定することができるか。
これを処置のたびに確認して状態を把握しましょう。
褥瘡は、真皮にまで及ぶ深さがあると、治癒までにとても長い時間が掛かります。
褥瘡ができにくい環境づくりを行い、同時に創保護・固定をして、今以上に深刻な状態にならないように予防を考えることが何より大切です。