体調を壊したり病気を患ったりして長らく病床に伏している人は、その治療とあわせて体の基礎体力や免疫力の維持にも気を配らねばなりません。
寝たきりの状態を長く続けると、人の体には健常なときと比べてどんな違いが起こり、変化が現れるのか。リスクと可能性を知っておくことで、予後の生活に支障をきたさず、スムーズに日常生活に戻ることができるでしょう。
〇寝たきりになると起こるからだの「低下」
体を安静にして、基礎疾患や外傷部分の治療を優先したい時間は、決して無理をせずに治療に集中すべきです。ただ、安静を強いられている人(特に加齢や神経系マヒなどによって体を十分に動かすことが困難な人)は、率先して体を動かす時間を作る様にしましょう。
寝たきりで過ごしていると、体は様々な「低下」を引き起こします。
●寝たきりは運動機会と基礎代謝が低下しやすい環境
人は、体を起こして生活することである程度の運動と同じような行動を続けています。階段の上り下りや歩くこと、座ったままでも姿勢を自力で維持して、振り返りざまに物を取ったり背伸びをしたりする…。このような行動に連動して筋肉や関節が伸び縮みします。
ずっと寝たきりで体を横たえる姿勢は、運動する機会を減らしてしまいますし、頭と全身の高さがフラットになって支えられている楽な状態となるので、体を起こした状態で得るはずの各部位の刺激が少なくなります。
●血流と免疫力の低下が起こる寝たきりの状態
筋肉が伸縮すると、それに伴って体の血管が刺激されて血流が起こりやすくなります。運動をした後に動かした部分や鍛えたい部位が熱くなるのはそのためです。
日常的な動きと、人間の基礎代謝によって血流もある程度維持されます。しかし、寝たきりの状態が長くなると、運動と疎遠になりがちです。
血流が悪くなると、体に必要な栄養をいくら摂取しても全身に運ぶことができなくなります。血流阻害によって体温が低くなり、免疫力も低下しやすくなります。
●運動不足でおこる食事意欲の低下と寝たきり
全身運動をすると、体を動かすためのエネルギーが必要になります。その熱量を維持するために十分な栄養を体が欲するのです。
しかし運動ができない寝たきりの状態は、熱量を必要とすることが無く筋肉の刺激も乏しくなり、長期安静によって自律神経のバランスが乱れやすくなります。すると食欲が低下し、食事量が減少します。
体に必要な食べ物を十分に摂取できない、食事バランスが悪くなる、嗜好がつよくなるといった状態が長くなればなるほど、健康な体作りに求められる栄養素が損なわれ、免疫力を低下させることにつながります。