床ずれの予防 褥瘡発生のメカニズムを理解する

床ずれは、その文字から見ると「ずれ力が働いて擦れることによっておこる損傷」というような印象を与えますが、単にずれることで起こるわけではありません。
同じ程度のずれ力が起こっても、褥瘡を発症する人としない人がいます。また、ずれ力がもたらす影響は、患者ごとに異なります。
褥瘡ケアのガイドラインによれば、床ずれの予防には、仰臥位(寝た姿勢)のほか、その時々の姿勢に応じた体圧分散が有効だとされています。体の重みによってかかる圧力を解消し、ずれ力を防ぐことで、何が解消されるのかを知っておきましょう。


〇床ずれのもと 阻血性障害を解消
まず、体の一部に体圧やずれ力などの外力が加わると、阻血性障害が起こります。血流が阻害されて、十分な栄養を各所に届けることができなくなり、体内成分のグルコース供給が不足します。
代謝機能が阻害されて、嫌気せい代謝が亢進することによって、組織内に乳酸が溜まり始めます。乳酸は、主に筋肉痛を起こした箇所に溜まり、体内の疲労物質にたとえられますが、血流に乗せて、肝臓や腎臓などに運ぶことができれば、老廃物を体にためることもありません。

 
〇リンパ系機能障害を解消する
血流と同時に、リンパの循環にも注視しなければなりません。圧迫とずれによってリンパ灌流がうっ滞すると、老廃物や自己分解性酵素が体の一部に溜まってしまいます。次第に周辺細胞が壊れ、また壊死し始めてしまいます。この状態を招かないために、圧力を継続してかけ続けないことが大切なのです。

 
〇再灌流障害を解消する
体の一部を圧迫すると、血流が著しく悪くなります。すると、栄養素や酸素が不足し(虚血の状態)ますが、そこに血流が再び流れることで起こる障害があります。
虚血の状態が長ければ、その周囲の細胞は壊れ始めます。壊れた細胞の内容物が染み出はじめ、そこに再び血流が復活すると、細胞内容物も一緒に血液中に流れ出てしまいます。
また、急に血流が回復すれば、各所でむくみを起こしやすくなります。むくみが起こると、皮下組織部分に不要な水分や老廃物が溜まり、ずれ力の影響を受けやすくなります。
適切に、定期的に血液を全身に送ることは、身体維持の面でも非常に大切です。

 
〇患者それぞれの状況をみて褥瘡を防ぐ
ガイドラインに沿った体位変換やポジショニングを行っていても、床ずれを起こしてしまう患者はいます。その人の体の状態や、疾患の有無、投薬の副作用や栄養管理など、さまざまな要因を検討して、患者一人一人にあった体位変換や除圧を行いましょう。
床ずれは、単純に患者の体に傷ができるだけではありません。その傷は常に患者に痛みを与え、処置や洗浄のたびにストレスを与えます。少しでも生活しやすい状態を作るために、しびれや痛みのない環境を整えるという意味でも、ぜひ予防と発症させないケア・早期の回復を目指しましょう。