寝たままの姿勢で過ごすことが多い入院患者や、在宅看護・介護を継続している人にとって、悩みの種ともいえるのが「床ずれ(褥瘡)の発生」でしょう。
健常な体の人には、そのつらさが想像しづらいかもしれません。一時的な外傷で、擦り傷や切り傷を作ってしまい、その治癒まで脈を打つような痛みを感じる、またうずく・チリチリとした痛みが続くといったような経験を一度はしたことがあるでしょう。それが絶えず続き、痛みが長期的・慢性的に続く(褥瘡の状態)となると、体だけではなく、心にもその傷がストレスになります。
〇褥瘡の発生率で何を見るか
褥瘡が、一医院の中のどの病床レベルの人に対してどれだけ発症しているかを表す数値があります。それが「褥瘡発生率」です。
ここで表される数値は、実際に入院している人の中の自院褥瘡発生割合がどのくらいかを表しています。
●褥瘡新規発生率の求め方
日本褥瘡学会による「褥瘡有病率」や「褥瘡推定発生率」は、その調査を行う日時点で褥瘡が起こっている患者数がもととなります。よって、その傷の深度や大きさはこの調査数値に反映されません。
「褥瘡新規発生率」は、調査月の新規入院患者数+前月最終日在院患者数を分母とし、入院後に新規で発生した褥瘡数(別部位を1とする)を分子として算出します。
仮に、一人の患者が複数個所の褥瘡発生をした場合は、分子数にその個数をカウントします。患者全体の人数のなかで何か所の褥瘡が起こったか。を数値化したものです。
●褥瘡推定発生率の求め方
褥瘡推定発生率は、各月最終日の在院患者数を分母とし、調査日に褥瘡を有している患者の数から入院時すでに褥瘡保有が記録されていた患者数を引いた数字を分子とします。
ここで求められるのは、自院で新たに発生した褥瘡とその患者数を月ごとに集計し、その推移を読み取るための数値です。
〇褥瘡の発生率から何をもとめるか
一つの結果判断材料として、褥瘡発生率を算出した場合、またはその数値を患者の立場で見た場合に、何をその数値から読み解くかが重要です。
褥瘡の新規発生率が上昇している医院では、入院や在宅治療の原因となる疾病・疾患の継続的な治療以外に、その患者のトータルケアやチェックが行われているかという点で疑問を投げかける材料となりえます。
また、褥瘡推定発生率では、在院患者に起こった(自院で発生したと思われる)褥瘡がきちんとケアできているかという指標になります。
入院や在宅の患者をケアするという点では、その生活の質やケアの内容、観察の手厚さなど、多くの要件が関わりあってきます。患者が、痛い・居心地が悪い・違和感がある体勢で長く過ごせば、必然的に褥瘡を発生しやすくなります。
褥瘡発生率は、十分な看護人員とフォロー体制、観察の頻度とクオリティ…これらの指標ともなり得るでしょう。