デブリードマンと医療保険 処置と算定は

褥瘡が進行し、皮下組織を欠損して深部に至るところまで炎症が進んでしまうと、筋肉や骨に近い部分の組織まで創傷が及びます。褥瘡は深くなればなるほど治癒までに時間がかかり、瘡部分の細胞が壊死したり、感染を引き起こします。
壊死細胞がみられたり、感染している組織があれば、褥瘡は快方に向かいません。そのため、壊死した組織を取り除き、老化した細胞や異物を除去することが何より大切です。
傷部の状態を良くするために行う処置がデブリードマンです。


○デブリードマン処置が必要な褥瘡ケア
初期の褥瘡であれば、皮膚組織の状態を清潔に保ちながら、血流を促して保湿を行うのが通常の処置方法です。しかし、ポケットが出現したり、創傷部分に細菌感染している細胞部分や壊死組織があれば、成長因子のあるきれいな肉芽細胞を育てるために除去しなければなりません。

 
●デブリードマンの方法は
褥瘡に感染や壊死がみられる場合には、早期の段階でデブリードマンを実施するのが効果的です。はさみやメスを用いて、壊死組織の除去を行います。
除去すべき細胞や組織のみを取り去ろうとするのは難しく、また深部に至る疑いのある、厚く固まった壊死組織には、その下や周辺に膿傷やたまった滲出液のあるポケットが出現する可能性が高いので、切開してその褥瘡の状態を確認することになります。
外科的なデブリードマンには、保存的治療を行う前提で、健全な組織を合わせて除去する場合もあります。反対に、壊死組織の一部を除去して新しい肉芽組織を育てる方向に促す「メンテナンスデブリードマン」もあります。

 
○デブリードマンは医療保険が適用されるか
デブリードマンは、創傷部分の処置を行う手段であり、その行為自体が独立した医療行為とはなりません。創傷処置で必要と医師が判断して実施をした場合には、デブリードマン加算として診療報酬に加算算定されます。

 
●デブリードマンの公的医療保険算定報酬
創傷部分の広さ、また骨や腱に近いか否かによって、算定する加算点数が異なります。
褥瘡が深部にまで進行しており、骨や腱があらわになるような状態の場合には、「深部デブリードマン加算」が適用され、所定点数に1,000点が当初一度のみ追加となります。
洗浄・除去を目的に、水圧式デブリードマンを実施した場合は、一連の治療について1回限り「水圧式デブリードマン加算」が2,500点加算します。

 
○デブリードマンは第三保険の適用を受けられるか
個人で加入する医療保険には、その処置や手術が約款に定められている場合にのみ、保険金の支払いを受けることができます。
デブリードマンは、創傷部分を治療するための処置ですが、保険会社で加入する医療保険の適用外処置としている商品が大半です。約款には、疾病または傷害治療を目的とした手術等に対して給付金支払が可能なものを明記しています。
あわせて「創傷処理・皮膚切開術・デブリードマン…に該当するものを除く」と書かれているものが多く、この場合、褥瘡の創傷処理は、医療保険の適用を受けることができません。