褥瘡の見極め 傷の状態をみて「今」を正しく把握する

発生した褥瘡の傷を見ただけでは、今どんな状態なのかを正しく判断することは難しいといえます。
褥瘡の傷にはいくつかの見極めポイントがあります。それぞれに当てはめて、相対的にまた観察した時間の経過をあわせて、処置のタイミングごとにどう変化しているかを判断していかねばなりません。
サイクルごとに変わる創の状態を見て、外用薬や処置が正しく効果を発揮しているか、これからどんな処置を行っていくべきかを決めていくことになります。


○まずは褥瘡が「きれい」か「きたない」か見る
深部に達している創は特に、その創面がどうなっているかをまず確認し、きれいな創か汚い創かを判断します。

 
●汚い傷(創面)とは
傷の全体を確認します。褥瘡はステージ3(皮下組織が損傷し深部に達している)以降に進んだ場合、感染症や炎症を起こしやすくなります。傷口が化膿している・壊死細胞がある場合は「汚い創」と判断します。
炎症が進んでいる場合、創の表面に膿(黄色がかった肉芽)や黒色細胞(壊死部分)が混在、または覆っています。膿が出て患部のにおいがきつくなり、滲出液が多量に出るという特徴があります。

 
●きれいな傷(創面)とは
褥瘡の縁がくっきりとわかり、損傷を起こした部分の細胞が赤くてらてらと光って見える創は、きれいな創と判断します。一見して赤みが多く、状態が良くないように見えるかもしれませんが、良質な肉芽細胞が育っているといるときは、創全体が鮮赤色になります。
仮に、良質肉芽の間に壊死細胞や化膿兆候が見られたら、菌に対する免疫やバリアを備えていないため、その部分を除去しなければなりません。
滲出液も出ますが、においがない漿液性にかわります。湿潤状態を保つことが褥瘡の治癒にはとても重要ですので、滲出液コントロールをしっかり行っていくことが大事です。

 
○褥瘡の傷を完治させるために必要なこと
褥瘡は、ずれ力と体圧が主な発症理由です。褥瘡がおこった場所ばかりを注視していても、周辺の皮膚にずれ力が働くと、傷が治るどころか大きくなる傾向があります。

 
●表面的な傷の大きさで褥瘡を判断しない
傷口が小さければ、完治までの時間は掛からないだろう、と想像しがちですが、褥瘡の見極めは「創面のきれいさ」に加えて「傷部分の感染兆候」と「深部(ポケット)の炎症」を改善しなければ直りません。
ずれ力が傷周辺に起こる環境を続けていれば、褥瘡の深部で創傷部分を広げてしまい、また創面が大きくなったり、ポケット形成が起こりやすくなったりします。

 
●ずれ力を解消して褥瘡を大きくしない
日々の介助を通して、ずれが働く原因を探る必要があります。小さな傷口なのになかなか完治しない場合は、特に移乗や体位変換時のずれに注目してみましょう。
局所と耐圧、栄養の管理をしっかり行って、なるべく早く完治させる環境を整えましょう。