化膿した褥瘡に施す適切な処置方法と注意点

褥瘡の発生と感染は、常に隣り合わせにあります。感染菌の侵入を防ぐ役目をする皮膚が欠損し、更に上皮組織よりも深部にある細胞も破壊してしまう可能性がある褥瘡は、表面だけでなく、創傷部分全体の炎症や感染に注視して処置を行わねばなりません。
特に、傷口が黄色や茶褐色、黒色化した化膿状態の場合は、慎重に処置を行いながら外用薬を塗布して経過を観察しましょう。

〇膿が出現する褥瘡の症状

褥瘡に菌が付着して増殖すると、創傷部分とその周辺が赤くなったり、腫れや熱っぽさ、脈を打つような痛みを感じたりします。そして炎症を起こしている傷口部分には、菌と戦う白血球の働きによって膿が現れます。

体内に侵入した細菌や感染源を攻撃する白血球が壊れ、同時に死滅した細菌が膿の正体です。白血球が機能している状態と判断することもできますが、化膿が進めば、創傷部分そのものの傷の治りを遅延させてしまいます。

〇軽微な褥瘡が化膿した場合の処置方法

体に傷ができると、その傷を乾燥させて皮膚を硬化させるのが良い…と考える人もいるかもしれません。しかし、創傷部分を再生させるために分泌される滲出液で傷口を覆うほうが、傷の直りが早くなります。

滲出液には、組織を形成する因子が含まれており、滲出液で傷ができた部分を潤わせることで、細胞や組織の修復スピードを速めることができます。これを湿潤療法といいますが、近年は傷口に貼るタイプのシートや絆創膏も市販されているので活用すると良いでしょう。ただ、湿潤療法は体内の自己治癒力を引き出す方法です。第一に患部を全て覆うこと、そして常在菌も攻撃してしまう消毒や、水分を吸い取って傷に貼り付きやすいガーゼは使用しないというのがポイントです。

〇深部で膿がたまっている褥瘡の処置

褥瘡が皮下組織にととまらず、真皮以下の細胞にいたる場合は、前述した湿潤療法で完治させるのは難しいです。炎症を起こした組織の層が厚い分だけ、感染箇所が点在しているリスクがあるので、まずは感染組織と膿を排出除去します。

ただし、化膿の症状が顕著なまま感染細胞を除去したり、膿を押し出したりするのは良くありません。化膿した傷は、菌の増殖が活発化しやすい状態です。まずは傷の炎症症状を沈静化させるために、抗生物質を塗布または服用して、感染菌を死滅させるのが先決です。

炎症反応がおさまったら、壊死組織や膿を除去し、外用薬やフィルム等で創傷ケアを行いましょう。
 
褥瘡は、表面で見た傷の大きさよりもずっと深く、脂肪や筋膜、骨に達することもある皮膚疾患です。慢性的な傷になりやすく、完治までに時間がかかります。根気強く丁寧に処置をして、感染や炎症のないきれいな創の状態を保つように心がけましょう。