体を自由に動かすことができずに同じ姿勢を取り続けると、特に骨突起部分に体圧がかかり、床ずれ(褥瘡)を引き起こしやすくなります。血流が悪くなることで、自然治癒力が低下することも床ずれを助長することが分かっていますが、過度に運動を促すと、摩擦やこすれによってかえって褥瘡を発生することになりかねません。そこで、寝たきりの体勢のままで運動をするのと同じ効果を期待できる血行促進方法を上手く取り入れていくことが大切です。
○入浴で血行促進
入浴は、体を清潔に保ちながら、皮膚の表面に水分を与えてドライスキンの状態を改善することができるため、褥瘡ケアの中でも重要視されています。入浴をすることで、ケアのために塗布した外用薬を一旦きれいにし、また浸出液がでる患部を洗浄することもできます。
●体の洗い方
褥瘡を発症した患者にとって、患部を擦らないようにやさしく洗う事がなによりの注意点です。弱酸性のボディソープや石鹸を用いて、しっかり泡だて泡で包むようにしてやさしく洗います。そして、洗浄剤が残らないように、皮膚をひと肌に近い温度のお湯できちんと洗い流します。体をふく時は、こすらずに柔らかいタオルを使って 顔から手、腕、胸、お腹、背中、足の順番に丁寧にふきながら、他の褥瘡箇所がないか観察しながらふいて行きます。お風呂に入れない時も同様の順番で体をふきますが、患部周辺を温かいタオルを使って温めると、周辺の血流促進にもつながり、運動をしなくても体の血行を促すことが出来ます。
○振動による血行促進
近年、寝たきり患者にとって効果があると言われる振動に着目した、褥瘡の新しいケア方法「振動療法」というものに注目が集まっています。軽微な褥瘡の治癒促進、壊死組織をともなう中度の褥瘡で壊死細胞を除去する速さを促進させる、というような臨床結果も得られているというこの療法は、47ヘルツの振動数で血流を増加させるために、ベッドに振動器具を置いて行うケアです。血流を増加させると、褥瘡だけではなく糖尿病性足腫瘍などの創傷治癒にも効果があるいわれます。体表面に対して振動器を使って小刻みな振動を与えることで、微小循環血流を促します。振動による弊害も心配されるところですが、振動周期と振動強度をコントロールしながら、マッサージ・筋力アップのための補助トレーニングを併用することで、さらに効果が上がると期待されている治療法です。運動に制限がある患者にも、できる限りの手法を用いて血行促進を念頭に置き、治癒しやすい環境づくりをすることが、褥瘡ケアに求められています。