床ずれから死に至る敗血症のリスクも

床ずれとはどんな症状かと尋ねると、僅かな皮膚の損傷だと勘違いし、軽視している人は少なくありません。
しかし、床ずれが進行すれば、細胞が壊死・欠損し、最悪の場合には死にいたることもある非常に怖い損傷だという事を知っておかねばなりません。


○ニュースでも取り上げられた褥瘡の危険
2016年夏から秋にかけて行われたオリンピック・パラリンピックのシーズン中に、褥瘡にまつわる一つのニュースが放送されました。
パラリンピックのバスケットボール種目に出場した選手が、日本褥瘡学会のシンポジウムの中で自身の体験談を語り、実際に床ずれの怖さを感じたと話しています。

 
●床ずれは誰にでも起こり得る疾患
運動が可能な程に、活発で活動的な生活を送ることができていた身体障害者の方が、車いす生活を送る中で床ずれを起こし、その傷が原因で亡くなってしまうというのは決して稀なケースと考えてはいけません。
激しいスポーツをすると、接触や転倒をしやすく、ケガや皮膚の損傷する頻度も多いのではないかと想定できます。
ただ、床ずれは体圧によって血流が阻害され、皮膚に糜爛が生じ、または発疹・水疱ができることで起こります。決して障害者スポーツ選手や寝たきりの患者に起こる特有の症状ではありません。

 
●皮膚状態が大きく作用する床ずれ
体圧を解消するためのケアに注視するだけでは、床ずれ予防になりません。皮膚の血行を良好に保ちながら除圧することで、床ずれの発症リスクを抑えることはできますが、皮膚が汗や排せつ物で汚れている場合、床ずれが起こるとその損傷具合は早く進みます。
皮膚が汚れてふやけていると、保湿力が低下して皮膚表面が弱ります。その部分に力がかかれば傷になりやすく、皮膚欠損してしまった箇所から細菌が侵入して重症化してしまうのです。

 
●全身に感染すると重篤状態に
創傷部分を清潔に保つために洗浄し、外用薬やドレッシング材で保護しながら良好な肉芽をそだてることで褥創は治癒に向かいます。
しかし、皮膚損傷が激しい場合、体のバリア機能を持つ皮膚が無くなってしまった状態では、丁寧に感染予防をしても防ぎきれないケースが起こり得ます。
感染した箇所に壊死を起こし、更に感染源となるウイルスや病原体が血液に入りこめば、血流に乗ってあっという間に全身感染します。
床ずれとは無縁と思われがちな内臓機能低下や低体温、呼吸の乱れを起こし、敗血症になってしまう可能性が充分に有るのです。敗血症は一刻を争う症状で、措置が遅れれば重篤な状態に陥り、死亡してしまうリスクもあります。
床ずれを単なる皮膚の創傷と考えずに、可能な限り早く処置して患部を広げないケアを行い、注意深く経過を見て適切な処置を都度取り入れることが、重篤な敗血症を予防することに繋がります。