褥瘡が起こりやすい箇所は、骨の突起した箇所を中心に、背面のベッドやマットに接触する場所だということは、看護や介助を行う人にとって常識的に理解が浸透している基礎的知識です。しかし、それでも予防という観点から褥瘡をケアするのは非常に難しく、損傷を確認した箇所は、通常以上にケアを要し、看護計画や介護の度に確認することが大切になります。
○褥瘡の程度を計る目安
初期段階では赤みや発疹程度ですが、その赤みを褥瘡の初期段階と判断するには、専門的な視点が必要になります。まず、赤みが出た箇所の記録をきちんととり、その様子を注意深く見守ることが第一です。赤みが数十分で引くようであれば、単なる圧迫痕で床ずれ症状ではないと判断できますが、赤みが引かない・発疹や紫斑点が皮膚に現れた場合は、褥瘡の発症とみなされます。
圧迫箇所の傷みを確認する
神経が通常機能している場合、圧迫が長くなると血流が不足し、しびれや痛みを伴います。正座の姿勢が長くなると足がしびれるのと原理は同じです。長く病床に伏せていると、どうしても同じ姿勢が長くなり、圧迫箇所が増えます。頻繁に寝返りが打てる身体機能がある患者の場合は、褥瘡を回避することも充分に可能ですが、四肢のどこかにマヒが生じている患者や、腰・足を固定している場合、また高齢者で自力体位変換ができない人は、およそ3時間感覚で体位変換を行う看護計画を立てます。それでも、全ての圧迫を上手に回避することは非常に難しいものです。皮膚の血流不足や、患者の皮膚状態によっては、さほど時間がかからず表皮がふやけてめくれてしまい、浸出液がでる初期の褥瘡に進行してしまいます。パッドで浸出液を吸い、清潔な皮膚環境を整える看護にシフトして状態観察を続けますが、この介護やケアを行っている時に、処置で痛みがあるかどうかをしっかり確認することが実は非常に大切です。
痛みを感じ無くなった=真皮への進行サイン
表皮には神経が通っているため、薬の塗付や洗浄を行う時は、損傷個所が痛みます。また表皮がめくれてしまっているため、血管の脈を打つような疼痛も起こります。しかし、表皮の下にある真皮にまで褥瘡が進行してしまうと、痛みを感じなくなります。真皮部分には神経が通っておらず、患者自身が損傷箇所を認知することができなくなるため、症状は悪化しやすくなり、更に別の箇所に起こった褥瘡の傷みに注意力が取られてしまいかねません。真皮に達した褥瘡は、細胞壊死の切除を含めた外科的処置を行い、更に経過観察を注意深く行わねばなりません。褥瘡が原因で皮膚細胞が壊死し、その毒素が体に回ると合併症等を引き起こすリスクが高まります。