脊髄の損傷と褥瘡発症リスク 予防の注意点は

一度発症したら、治癒するまでは注意深くその変化を診て、時々に応じた処置が必要になるのが褥瘡。元の疾患に注視するあまりに、褥瘡発症を確認するのが遅くなってしまうと、その分だけ着実に深部では細胞の損傷が進んでしまいます。
神経系や基礎疾患がある人は、褥瘡が起こる確率が高まります。そして、同じ場所に繰り返し発症してしまうという特徴があります。
その原因をきちんと知っておくこと、また必要な対処を理解して褥瘡の危険因子を緩和する予防方法を探っていきましょう。


○褥瘡の発症と関連する疾患
継続的な治療を必要とする疾患がある患者さんや、神経系の麻痺などに障害がある人は、褥瘡の発症リスクが高まります。
特に、褥瘡発生の危険因子として注意すべき疾患は、「糖尿病・脊髄損傷・骨盤骨折・脳血管疾患」です。

 
●脊髄損傷患者の褥瘡再発
関連する疾患のなかでも、最も褥瘡に対する注意をしなければならないのが脊髄損傷患者です。慢性気の脊髄尊書患者の場合、国内のデータで、褥瘡は14年以内にすべて再発する(「脊髄損傷者に対する褥瘡再発予防アプローチの紹介とその結果」:日本褥瘡学界誌2010年12月 より引用)というリサーチ報告もあります。

 
●脊髄損傷患者に対する褥瘡予防意識
脊髄を損傷したことによる感覚・神経麻痺がある患者は、その麻痺の程度に個人差はあるものの、日常生活を一人で全て行うことが難しいほど、深刻な状況となる人の割合は高くなります。
全身ケアが恒常的に必要な人に対しての褥瘡予防は、その介護を担う人が中心となって行います。
脊髄の損傷によって、下半身麻痺など一部麻痺の残った人は、日常の生活を一部自分で行うこともできますが、感覚が無いために褥瘡の痛みや痺れを感じることができません。
そのため、繰り返し圧迫のある箇所が創傷していることに気づかないまま、有る程度自立した生活を送り続け、敗血症などの全身症状が現れて気づくということもあります。

 
○絶えず予防を意識する 褥瘡を起こさない動き
脊髄の損傷によって不随の状態になると、感覚が無くなった箇所のリハビリではなく、生活維持のために必要な体の代替機能を身につけるためのトレーニングを行います。
毎日トレーニングを繰り返して、皮膚表面が硬化した箇所は褥瘡になりにくくなりますが、骨が突出し、皮膚と骨がこすれ易い背中や臀部、ふくらはぎなどは鍛えることが難しく、この場所に繰り返して褥瘡が再発しやすくなります。
車いすで上半身を振るような反復運動をながく続けると、ずれ力が大きくなってきます。適度な休息を取り入れながら、「決して稼動域に負荷を掛け続けない」ことが大事です。
動いている感覚を優先して、不随の部分をこすりつけてしまう動きを、可能な限り減らすように意識しましょう。