床ずれが先か手術が先か 創傷の発生原因と予後の観察

疾患の治療を目的とした手術を行った人は、その経過を観察している間、ずっと寝たきりの姿勢で過ごすことで床ずれを起こす事があります。
安静を強いられる手術後は、特に床ずれを起こしやすくなります。
また、床ずれが起きた在宅要介護者が創状態を悪化させ、その治療を目的として入院、手術するケースも珍しくありません。


手術後の床ずれ観察と注意点
体に発生した病巣を根絶させるために、入院して手術を勧められることがあったとします。
もちろん疾患の治療が手術の目的ですが、手術のために体にメスを入れて傷ついた体を元通りに動かせるようになるまでには、相当な安静期間が必要です。
同じ体勢で過ごす時間がおおむね2時間を越えると、床ずれをおこすリスクが高まると言われます。
とはいっても、術後まもなく、床ずれを発生させないために小まめな体位変換やポジショニングを行うのも難しいでしょう。
入院・手術を行ったとき、注意しなければならないのは、床ずれが発生するリスクは全身に及ぶという点です。

 
患者の状態に合わせた床ずれ対策 マットレス選び
療養期間が長くなる手術後の患者には、体圧分散マットレスの中でもエアマットレスやウォーターマットレスのような、圧の調整が容易にできるものを使用するのが望ましいでしょう。
自力で体の一部を動かせるようなら、ウレタンフォームやゲル(ゴム)、または双方を重用するハイブリッドマットレスが適しています。

 
床ずれ治療のために手術をする場合
「高齢社会」「健康寿命」という言葉が表すように、安易に医療施設を頼らず、自宅で過ごしながら健康的な生活を目指す高齢者が増えました。
それに伴い、在宅介護サービスも充実してきましたが、完全看護の医療施設と比べて、体の異常や損傷に気づくまでに時間が掛かるという欠点もあります。

 
床ずれ治療を目的とした手術の実施
床ずれは、一度発生すると自然治癒が難しい皮膚損傷です。
薬を使用し、傷ついた皮膚組織の再生を促す処置が必要になります。
真皮細胞よりも深く床ずれの損傷が進んだ深い床ずれになると、感染や炎症、細胞壊死を伴うこともあります。
また、床ずれは同じ部位に繰り返し発生する危険に注意しなければなりません。
特に、好発部位といわれる骨の突出部分や仙骨(臀)部で床ずれをおこしたら、完治までに数ヶ月~数年を要すことになります。
治療が長期にわたると、他の部位で床ずれをおこすリスクを高めることにも繋がります。
そこで、深い創は手術(外科的デブリードマン:感染・壊死細胞の除去)を行って、外用薬を用いて組織の再生を促します。
床ずれの外科的手術は、疾患治療を目的としたものよりもずっと軽微で、基本は麻酔を使用せずに行いますが、肝心なのは予後観察です。
患部を清潔に保って更に感染リスクを抑え、処方された外用薬を使用し、他の部位に床ずれが起こっていないかを確認して日々経過を見守ることが、予防と再発防止の効果をあげます。