血液内に感染細菌が侵入し、その血液が全身を巡って各臓器に悪影響を与えることを「敗血症」といいますが、敗血症はすでに身体的に重篤な状態に陥っていると判断し、早急に治療を行わねばなりません。
それならば、体に重大な影響を与えるような敗血症を発症する前に、何らかの処置を施したいと感じるでしょう。敗血症と診断されるまでの潜伏期間はどのくらいなのでしょうか。
〇感染=敗血症ではない
局所の感染源がもとで、その原因となる細菌が血流にのって臓器に炎症を起こしたり、機能不全に陥らせるのですが、感染が起こったからと言って必ず敗血症を引き起こすというわけでもありません。
●全身症状が現れる前の処置と敗血症の関係
段階的治療の中で感染症は、その感染源の強さや、投与した抗菌薬(または外用薬)によって、悪化または快方を繰り返しています。感染源が特定できていれば、治療の方向性も見定めやすく、適切な投薬と抗菌によって感染は快方に向かうでしょう。
しかし、褥瘡のように、炎症や感染、皮膚状態や生活内の環境(おむつを使用する・栄養が十分に摂取できない)が日々刻々と変わる環境の中では、どれが敗血症の原因なのか特定をすることも難しくなります。
〇菌血症と敗血症 潜伏期間と危険性
敗血症と同じく、病原体が感染巣から血行性に体の中で波及することを菌血症といいます。その仕組み自体は敗血症と非常に似ていますが、他の臓器に対する影響が現れたかどうかによってその呼称も変わるという認識で良いでしょう。
菌血症は、破傷風や溶連菌など日常生活の中でも比較的身近に起こりえる感染症状です。血中に菌を確認したから、すぐに敗血症だという診断は下りません。
血液培養検査で感染菌の有無を確認する方法がありますが、この結果が出るには数日かかります。抗菌薬を投与して、効果があればそのまま症状は収束していくでしょう。菌血症だと気づかずに治っているという場合もあります。
●潜伏期間は患者と治療経過によって異なる
敗血症と診断された場合、それはすでに発症している状態です。また、敗血症を引き起こす特定の感染源が一定期間体内に潜伏し、それが時期を待って発症するというシステマチックな症状ではありません。
治療の効果が得られやすく、薬の効きが良い人は敗血症にならず、菌血症または局所感染にとどまることもあります。体力や免疫力が落ちて、食欲不振が続いている栄養不良の患者は、ほんのわずかな感染源で敗血症状態に陥ることもあります。
特に、免疫機能が不十分な幼児から子ども、また免疫と体力が減少している高齢者は、敗血症発症までの期間が短くなる可能性が高いので注意が必要です。