高齢社会といわれ始めてずいぶん経ちますが、人間の高齢化によって生活もずいぶんかわりました。在宅介護も浸透し、いろんなサービスも普及しています。そして、寝たきりの人向けに、訪問介護でケアを行ううえで、体位変換とポジショニングは欠かせません。
家族との生活を大切にし、在宅介護を受ける人のなかには、ペットに癒しを求めるという人もいるでしょう。そのペットもやはり年を取ります。いずれ老犬・老猫になれば、体に不具合が出て、寝たきりになってしまうこともあります。そして、人間と同じように、老犬も床ずれができるのです。
○寝たきりになれば老犬も床ずれケアを
寝返りを打てない、立てない状態になった老犬は、同じ姿勢でずっと時間をすごすことになります。横になったまま伏せて寝ていると、長時間同じ箇所を圧迫してしまい、血流がわるくなって床ずれを引き起こしやすくなる…というのは人間と全く同じです。
○発見が難しい 老犬の床ずれ
人間のように、機嫌や食欲、会話や返事のトーンなどでその時の健康状態や痛みの有無が判断しづらいのが老犬。長い時間をともにして信頼関係がある老犬と飼い主なら、有る程度の意思疎通が雰囲気から感じられるかも知れません。
しかし、適切に痛いところやうずく場所を教えてくれるわけではありません。やはり飼い主の全身観察がとても重要になります。
○老犬ならではの床ずれトラブル 処置の難しさ
入浴という習慣がある人間は、その傷の箇所をきれいに洗浄して床ずれの具合を確認し、処置を行うこともできます。しかし、犬の場合、全身が毛で覆われているため、ごく初期の床ずれでも滲出液が出れば毛を汚して固まってしまいます。これを取り除くのは老犬にとってもストレスになり、また飼い主も大変です。
体に傷があれば、犬は本能で舐めて直そうとします。頻繁に体の一部を舐めるという行動が見られたら、その部分をしっかり確認しましょう。
○老犬に必要な床ずれの治療と感染予防
傷口を触られると嫌がって、飼い主に対しても鋭く扱いづらい行動をとってしまうことがあるかもしれません。床ずれが進行してしまう前に(詳しく例えるなら骨や腱が見える、壊死細胞がある状態になる前に)発見して治療を行うべきです。
犬には皮膚細胞の下の脂肪が少ないので、骨が突出している関節や脚の付け根、お尻は特に慎重に観察し、マットや床ずれ防止クッションなどを使用しましょう。
抗菌薬をつかって感染予防と治療も忘れずに。ただし、老犬は塗布した薬を舐めてしまうこともありますので、ドレッシング材などを用いて、湿潤を保ちながら傷口を常に清潔な状態にしておきましょう。