同じ姿勢のままでいると、体の局所に体圧が生じて血流が不足します。正座をしたりうたた寝をした時に、足や腕がしびれるのは、血流不足によるものです。
寝たきりの患者は臀部に褥瘡を生じる人が多いですが、車椅子を日常的に使用している人も同様に褥瘡への注意が必要です。
では、車椅子座位の場合、どんな点に気をつけていくべきか、体位の設定を中心にして考えてみましょう。
〇車椅子で褥瘡をおこしやすい部分は
寝たきり、または常に介助を必要とする人と比べると、車椅子で移動が可能な人のほうが、行動に自由度が高いイメージがあります。しかし、体の一部が麻痺した状態や、自分で姿勢を変えられない場合、車椅子のほうが圧力やずれ力は局所に集中しやすくなります。
最も注意しなければならないのは、腰や背中と背もたれの擦れです。また、移動の際に左右に曲がる拍子に膝やくるぶし、足首を車椅子の足置きやガードに当たる点も注意して、全身観察を行いましょう。
〇車椅子座位時間に配慮を
慣れれば移動が楽に行える車椅子は、まさに患者自身の足となります。しかし、ずっと座りっぱなしの姿勢でいると、臀部から仙骨にかけて圧力が集中しやすくなります。長時間の同一姿勢は避けましょう。また、一定時間ごとに姿勢を変えるように意識しておくことが求められます。
●プッシュアップで体圧は解消するか
体に痺れや痛みを感じる場合、座った姿勢のまま両腕で体を支えて除圧すると、少し痛みが楽になったように感じます。ただ、一時的の除圧(プッシュアップ)は数秒、長くても10秒程度の短時間の荷重変換に過ぎません。血流不足を起こした箇所は、この程度の除圧では十分に血流が戻らず、またすぐに痺れや痛みを引き起こします。
車椅子から降りて、ベッドで体を休める、または前傾姿勢や片側に体を傾けるなど、姿勢変換を一定時間まとめて取り、血流を戻すことが大切です。
〇高齢者の車椅子姿勢と褥瘡発生リスク
特に高齢者に多く、褥瘡を起こしやすいのが、仙骨すわりと呼ばれる座位です。仙骨が後ろに傾くことで、尾骨部分に体圧が集中して褥瘡を起こしやすくなります。加齢によって背骨が湾曲すると、座った姿勢で上半身が前傾し、坐骨結節や大転子部分で圧力が高くなります。
骨盤が前後左右に動いてしまうときは、骨盤全体を包むようなクッションを使用しましょう。姿勢を矯正する効果が期待できると人気が高い円座は、クッション部分の皮膚組織に圧迫を生じ、座位バランスを不安定にするリスクがあるので使いません。
体圧が実際にどのくらい掛かっているのか、骨盤あたりの下に手を入れて接触面の圧力も確認しておきましょう。