床ずれが起りやすい部分は、骨が突出している部位と仰臥位の姿勢で圧迫が生じやすい臀部(仙骨から大腿部にかけて)。体の重みと移乗や寝返りによるズレが、直接的な圧迫の原因となって、床ずれを発生させます。
体圧を分散する機能を備えた低反発マットレスを使用すると、特に腰回りに集中する圧迫を軽減することができます。しかし、この低反発機能を頼って、その他のケアを怠るのはよくありません。
低反発マットレスは、床ずれの発生リスクを抑制するための手段の一つと捉え、常日頃から恒常的な観察と予防を意識しておく必要があります。
〇低反発マットレスが接地する皮膚の状態観察
床ずれがおこる可能性が高い部分を、定期的にスキンチェックしましょう。低反発マットを導入するレベルの身体状態は、自立した生活を営むことが難しい、介助が必要な患者であることがほとんどです。常に、管理と処置の目を要し、わずかな変化を感じ取って改善する人の「よりそいケア」を要します。
移乗や清潔、排泄のお世話をする際に、体圧が大きい局所の皮膚状態を確認しましょう。赤みや水疱ができていないか、ずれによるシワの跡はないかなど、スキンチェックを都度行うことで、重症化する前に床ずれを防ぐケアに取り組むことが可能です。
●低反発マットの状態もチェックを
継続して低反発マットレスを使っていると、頭部や腰部の部分に凹みが生じます。体圧が大きくかかる部分に、マットレスのへたりが出やすくなるためです。定期的に、マットレスのへたりがないかチェックしましょう。福祉用具のレンタルは、交換や入れ替えをしやすく、介護保険を利用して安価に導入することができるので、前向きに活用しましょう。
〇寝たきりの患者ケアで注意するべきことは
体圧分散機能のあるマットレスを使用している間も、定期的な体位変換は必要です。体位変換を行う際も、抱える介助人が添えた手の力加減によって、乾燥したハリのない皮膚に傷をつけてしまうことがあります。また、爪が当たって皮膚損傷を起こすこともあります。
低反発マットレスのなかでも、ゴム製やウレタン製の用具は比較的価格も安く、床ずれを予防する観点からみても有効とされ、幅広く導入されています。
ただ、寝ている時間が長くなると、圧迫と同時に寝具内に湿気がこもってムレが起こります。おむつを使用している患者は特に、臀部のムレが起こりやすくなります。排泄後は、皮膚に刺激も起こりやすく、不快感があると細かに体位を変えようとして細かなズレが起こりやすくなります。そして、繰り返す細かいズレによって、床ずれの発生リスクが高まります。
低反発マットとの接地面は、重点的に保湿ケアを行いましょう。パジャマとの擦れや湿気、汗をかいていないか、かゆみを生じるような皮膚の発疹はないか、など、圧迫とズレに対するケア以外にも目を向けて、「快適な状態を保つ」ためのスキンケアを行いましょう。