褥瘡の予防や治療を要する人の多くは、寝たきりで過ごす高齢者や、入院や治療による長期療養のための安静姿勢が長い人といえます。
褥瘡を予防する方法は、その発症を抑えるための「除圧」と「ずれ力」の解消を行うための処置が直接的なものとして広く知られています。
しかし、体位変換やずれを解消するためのポジショニングを行っていても、繰り返し褥瘡を発症する人はいます。
単に予防をするための処置方法としてではなく、患者の健康状態と合わせて、体のトータルケアが必要であると考えましょう。
〇軽視できない 褥瘡が起こる原因は身近にある
自立した生活を繰り返していた人が、ある日のきっかけを境にして寝たきりになってしまい、褥瘡に悩まされる日々を繰り返すこともあります。
特に、身体の回復力が乏しくなりがちな高齢の方は注意が必要です。
●運動能力の低下と寝たきりになる要因
はつらつとした気分で毎日を送っていても、加齢とともに、思ったように身動きができなくなってきた…と感じる瞬間が多くなってくるものです。
気ばかりが先にいき、体がついてこなくなってしまうと、転んで骨折や打撲をしたり、関節に負担がかかって傷みを感じたりするようになります。
それまで以上に「動くことに対する痛み」が増幅され、無意識に「動かない」生活を選びたくなってしまうのです。
特にケガの療養で一時的に安静を強いられた場合は、起き上がって普段の生活に戻るためのならし時間をしっかりとって、自律神経を正常にもどすことが大切です。
●栄養・血流障害と褥瘡
病床に長くとどまると、体を自発的に動かす機会が減り、運動量が著しく減少します。
次第に空腹感覚が遠のき、経口摂取量が減って栄養が偏りがちになります。
反対に、過ごす時間の中に楽しみが感じられず、口寂しくなり嗜好品を多く摂取することで栄養が偏る場合も考えられます。
必要十分な栄養が摂取できないため、低栄養状態になりやすく、自立した生活はおろか、慢性的な貧血などを起こしやすくなります。
〇貧血のような症状と褥瘡リスク
貧血の症状には「眩暈・たちくらみ・目がチカチカする・疲れやすい」といったものがあります。
日々の動作でこのような症状が現れると「貧血かしら」と思いがちですが、一概にそうとも限りません。
めまいや立ちくらみは、長期療養をしていた寝たきりの人に起こりやすい症状の一つです。
主に、安静の状態が長いことが起因する自律神経の乱れが考えられます。
自律神経が乱れると、活動と安静のサイクルが不規則になり、急に姿勢を変えたり立ちあがったりするとふらつきがおこる、起立性低血圧の症状が現れやすくなります。
これを、貧血だと勘違いしてしまうケースが多いようです。
また血流障害を起こしやすく、血行不良になりやすい点にも注意が必要です。
低栄養状態や自律神経の乱れは、体を正常に維持・修復する機能が低下する原因となります。
血流が滞れば、褥瘡で傷ついた箇所を快方に向かわせるために必要な栄養が届けられず、治癒力が低下してしまいます。
貧血と、貧血に似た症状がある人は、直接的な褥瘡ケアに加えて、体内の栄養や健康状態にも十分配慮しなければなりません。