病床に伏した人は床ずれを起こしやすいため、入院患者の経過観察やケアプランに「床ずれ防止」の策を加えることは珍しくありません。
しかし、同じ疾患やケガが原因で入院しても、年齢や性別によってその内容や程度に違いが出てきます。
そして単に年齢だけで必要な処置や導入する用具、ケアプランを分けていると解釈するのは違うでしょう。
若い人と高齢な人の身体にどんな違いがあって、床ずれを起こさないために何が必要なのかを知っておきましょう。
〇若い人の皮膚状態と床ずれの発症
特に若い女性は、自分の肌の状態やシワ、しみ、乾燥が気になって、日々基礎化粧品でケアにいそしみます。
肌の状態は、床ずれの発症リスクに直結します。若い人の元気な活力ある肌は、床ずれを起こしにくく、年を重ねた肌は床ずれを起こしやすいのです。
●ハリ・弾力と床ずれの発症リスク
若い人の肌はハリと弾力があり、外力が少々肌にかかってもその圧を跳ね返す力があります。
局所に継続してかかる外力は、若い人・高齢者ともに皮膚細胞の損傷を招きやすい状況であることに変わりはありません。
しかし、弾力がある若い人の肌は、圧力を跳ね返す肌本来の力を発揮して、圧迫による変性を起こしにくいといえます。
●床ずれは乾燥しにくい肌で予防
乾燥した肌は、水分量が減ってしぼんだ状態。シワが目立ちやすくなり、水分を上手くキープするたんぱく質が不足していることにより、与えた水分も蒸発しやすくなります。
肌が乾燥してしぼんでくると、引っ張る力(横向きに働くズレ力)に対して肌が伸びてしまいます。引っ張られた状態のまま圧力が加わるため、皮下組織が壊れやすくなり、床ずれを起こしてしまいます。
〇床ずれに必要な栄養の摂取と代謝
若い人の体は基礎代謝力が高く、常に身体・内臓が活動し機能しています。
食事量も十分に取りやすく、摂取した栄養を全身で効果的に活かせるため、細胞や臓器、機能の維持が比較的容易です。
しかし、加齢に伴って基礎代謝力が低下し、十分に栄養を体内で取り入れることが難しくなってきます。
食事量も減り、経口摂取だけで栄養を取り入れるだけでは、健康維持のために必要な栄養を補給することができなくなります。
床ずれを発症して上皮や皮下組織が損傷しても、若い人のほうが修復を行うスピードや必要なたんぱく質の補充スピードが早く行われます。
高齢者と比較すると、若い人のほうが床ずれ発症リスクが低いといえるでしょうが、入院している間は特に、圧迫とずれ力に注意しながら、身体状態と回復レベルに応じて、適時体位変換を行うことが大前提です。
床ずれは、一度発症すると完治するまで傷みや処置を繰り返さねばなりません。
発症をさせない環境つくりと継続的なケアを行うことが大切です。