慢性的な基礎疾患がある人や、容体の急変がもとで入院することになった人、事故など突発的な外傷を負った人など、入院する原因はそれぞれです。
その病気やケガを治療することが入院における一番の目的ですが、治療で必要となる処置や装具に褥瘡を起こすリスクが潜んでいることを忘れてはいけません。
〇医療機器による圧迫で褥瘡が起こる
患者の治療を目的として、医療現場ではさまざまな装具や機器を使用します。もちろん、病状やケガの具合、患者の身体状態をリアルタイムで正しく確認し、治療をするためには欠かせません。
しかし、医療器具や装具が直接的に体を圧迫して、皮膚を傷つけるケースがあります。擦れやずれ、圧迫が恒常的に起これば、やがてその部分は褥瘡になるでしょう。
〇看護計画に褥瘡確認を加える
入院患者に対する看護計画は、患部状態確認のほかに、体温・脈拍・顔色・意識レベルチェックなど、全身症状に対するチェックが必須です。そして、経過や状態が良い時間が長くなり、体をある程度自力で動かせるようになると、褥瘡の発症リスクに対する意識が薄れがちです。
安静が長い患者や、座位・医療装具を着用した状態が長くなる患者は、褥瘡が起こっていないか確認するためのチェックポイントを看護計画に組み込みましょう。わずかに自力で体を動かせる患者のほうが、ずれ力を起こしやすいので注意が必要です。
〇医療装具装着中の褥瘡発生ポイントと看護
呼吸器や意識レベルを測るための機器を装着している間は、継続した看護計画に沿ってその状態を確認しなければなりません。急変に備えて、気の抜けない看護が続くことでしょう。
ただ、医療機器や装具の圧迫によって褥瘡を起こすと、さらに炎症や感染に対する観察や処置を行わねばなりません。
褥瘡発生を防いで、万が一できてしまった創は早めに治療を行うようにします。
●酸素チューブの装着と創の看護観察
酸素チューブは、必要な患者にとっては呼吸の維持に欠かせない医療器具です。装着が長くなることが考えられる酸素チューブは、マスク部分をしっかりと密着させるため、ゴムで頭に固定する作りをしています。このゴムが強すぎると、耳の下あたりで圧迫創ができる原因となります。
また、皮膚が脆弱な高齢者は細いゴムが当たることで圧迫されやすくなります。ゴムを包帯で巻く、耳にあたる部分をガーゼや脱脂綿で保護するなど、直接にゴムが皮膚に触れないようにしましょう。
●頸椎固定カラーや手足ギブスの装着と看護
外科的な処置を行った後の骨固定に用いられる装着ギブスや、いわゆるむち打ち治療で使用するケースが多い頸椎固定カラーは、規格で製造されたものを患者の体に合わせて調節して使用します。
一度調整したらそのままにするのではなく、患部の処置を行うときにギブスが肌に接触して創傷していないか、引っかかる部分や痛みがないかを、観察の都度確認するようにしましょう。
患者自身が装具の不具合や痛みを言い出すことに抵抗を感じている場合もあります。言い出しやすい雰囲気作りや声掛けを常に行うことも大切です。