入院患者、または車椅子や歩行具を使いながら生活をしている在宅要介護者にとって、褥創を発生させない取り組みは、日常的なケアと同様、またはそれ以上に大切です。
同じ姿勢を長くとると、集中的に圧迫される箇所や擦れる部分が出てきます。
車椅子を利用している人は腰・臀部部分のずれ力に、また歩行具を使っている人は肘やふくらはぎ、かかと部分を重点的に観察する必要があります。
汗や素材の擦れ、刺激が重なると褥創はどんどん悪化します。なかでも、皮膚の汚染状態を作りやすいオムツを利用している患者は、褥創と合わせて感染症や炎症への注意も慎重に行いましょう。
○感染症の中でもMRSAに注意を
人間には常在菌があります。MRSAとは、健常な人や病気の人を選ばない、誰しも持っている可能性のある皮膚常在菌のことです。
健康な体の人に対してなんら悪さをする菌ではありません。菌に対して抵抗する力があるうちは問題ないのです。しかし、褥瘡を発症していたり、充分な栄養が取れていない・疲れや風邪、睡眠不足など体調が良くない状態が続いていたりすると、MRSAに感染しやすくなるのです。
●MRSAの特徴
通常、感染菌が確認されれば、その細菌に効果のある抗生物質を投与し、治療を行います。MRSAは黄色ブドウ球菌で、感染症状が現れた後に適切な処置を行えば、通常の感染状態と同じ様に治療が可能です。
しかしMRSAと診断され場合、その感染源は耐性を持っており、ほとんどの抗生剤治療に効果が期待できなくなります。
褥創は、発症した局所で免疫機能が低下してしまうため、創傷部分から感染しやすく、また治療が長引きがちなステージ3以降の深部細胞に達している場合は、感染に対して有効な抗生物質効果を確認しづらくなります。
○感染症がおこる原因を絶つ
感染症は、きちんと創傷を確認して洗浄し、適切な処置を行っていれば防げる場合がほとんどです。ただ、処置を行う介助・介護者を介して感染する可能性が高いということを理解しておきましょう。
清潔に保つ必要がある患部の処置は、当然に清潔な手指を以って行わねばなりません。皮下組織が損傷してバリア機能を失っている褥瘡の処置は、特に慎重に行うべきでしょう。
●入院患者の感染症拡大を防ぐ
患者の一人に抗生剤が効かないMRSAを発症したら、入院施設内患者の中で免疫機能が低下している人に感染しやすくなります。
菌は人の手を介して感染するリスクが非常に高いです。処置を行う医療従事者は、しっかりと手指衛生を行うこと。これが何より最も大切です。石鹸水と流水でキチンと洗浄し、接触による感染症と通常の予防策を徹底し、感染を最小限に食い止めるようにしましょう。