褥瘡が進行するうえで、「局所の圧迫を防ぎ、皮膚を清潔に保ちながら経過を観察して体圧分散マットレスを使用するのは、看護ケアの中でも注視されるべき必須条件です。そして、患者さんの心身のケアを進める中で、非常に重要となるのが栄養バランスの偏らない良質な成分を含む食事と、血行促進です。
○血行を良くすることで期待できる効果
寝たきりの患者や高齢者、また車いすを使う場合は、座位・寝た姿勢が長くなることで常に体の一部を圧迫する状態が続きます。すると、圧迫箇所の血流が乏しくなり、次第に血流不足から皮膚の血液減少を引き起こし、赤みや紫斑、水泡が表れてきます。血流がきちんと全身にいきわたることで、常に体中に必要な栄養素を届けることができます。皮膚は細胞の生まれ変わりも早く、外的刺激を最も受けやすい箇所です。仮に擦れや圧迫によって傷が生じた場合、その傷を治そうとして働くのが体内血液成分の白血球、血小板やリンパ液です。血行促進を常に意識して生活をしていれば、仮に外傷が起こっても血液の成分そのものの働きが活発になり、自己治癒力が高まります。そして、各所に必要な栄養素を常に供給することができるので、皮膚細胞の生まれ変わりスピードも促進されます。
○創傷治癒のために必要な栄養と食材
治癒の過程によって重要な栄養素は少し異なりますが、おおむね全期にわたりたんぱく質を摂取することは、褥瘡の回復と治癒に欠かせません。褥瘡が進行し、浸出液がでる症状になるとたんぱく質喪失をともないますので、状態や進行度に合わせて摂取する量も増やします。鶏肉や白身魚のような高タンパク源を経口摂取することが理想的ですが、経口摂取が難しい高齢患者には、ビタミンやサプリメントを併用して必要な栄養を補うようにしましょう。ビタミンAは、炎症期から増殖期、成熟期にかけてトータルで必要となる栄養素です。ホタルイカやしらす、クリームやチーズに多く含まれる成分なので、毎日の食事の合間に少しずつでも取り入れたい食材です。コラーゲンを多く含む食材を摂取することで、肌のはりを回復させることができます。しかし、コラーゲン物質単体では体内吸収されないので、同時にたんぱく質を摂取し、分解吸収を促しましょう。糖質は体を動かすエネルギーとなり、血行促進と体力回復に非常に役立つ成分ですが、過剰投与を行うと高血糖になり、末梢循環障害や免疫力低下を引き起こしやすく、反対に褥瘡を発生しやすくする可能性がありますので、摂取量を注意して食材を決めましょう。