寝たきり、または車いすなど同姿勢をとりつづける患者に行う毎日の介助やケアの中で、病状確認や付随ケアはもちろんのこと、看護計画においてもその処置に時間を要すのは褥瘡の確認と発症か所の観察でしょう。一度発症を見逃すと、数時間後には広がりまたは初期症状からの進行が早く、軽度症状から中度に移行すると、看護や介護の計画も大きく変わってきます。褥瘡の初期段階・発症を注意深く観察し、重症化につながりやすい褥瘡をはやめにケアすることが、患者と介護・看護者の負担を軽減することにもつながります。
○初期段階の皮膚変化
褥瘡は、直接的な皮膚部の加圧や体の重みが原因となる加重によって、推しつけられている部分がうっ血し、皮膚の損傷や創傷がおこる症状です。通常、人間の体は押さえつけているだけなら、うっすらとした赤みをともなう程度で収まり、その後かかる圧力を自力で分散させることができれば床ずれのような症状を起こすに至りません。しかし、寝たきりでありかつ、体位変換が自分でできない場合、しかも四肢感覚がマヒしていたり、手足を自力で持ち上げたりすることができない程の体力で、意識障害等がある完全介護の状態が長い場合は、短時間で褥瘡を発症することも少なくありません。ですから、おむつの交換や体位変換を行う介助のタイミングで、ケアする箇所だけではなく圧迫箇所の有無や発症の兆候となる皮膚変化をできるだけ早い段階で見つけることが非常に大切になります。
●褥瘡びらんとは
皮膚や粘膜部分の表皮が傷つき、表皮下の細胞が露出している状態を『びらん』と呼びます。『ただれ』という表現方法とほぼ同じです。びらんという言葉で示す皮膚損傷は上皮部分だけですが、褥瘡部に水庖が現れてその水庖をつぶしてしまうことで細胞液・組織液が出て、患部の表面がじゅくじゅくと湿潤している状態を表します。上皮部分の損傷が進行し、更に真皮部分に及ぶと潰瘍と呼びます。
●発赤から水疱までの進行
少し圧力を加えただけであれば、皮膚圧迫による血流阻害のため、圧迫箇所が赤みを帯びた状態になります。この赤みが数十分程度で引けば正常な状態であり、床ずれは発症していません。しかし、発赤から時間が経ってもずっと赤みが引かずにいると、その箇所に斑点や水疱が現れてきます。この間の時間経過は、患者の体調や血行状態、栄養状態によって大きく変わってきます。圧迫による赤みはすぐに良くなるだろう、と軽視していると、次に観察した時には症状が進み、水疱がわれてびらんしていうという事も充分にあるのです。自分で体を動かせず、うっ血を逃すことができないのは患者自身にも大きなストレスになります。介護の都度、慎重に全身観察をして頻出箇所を特に注意しながら発症リスクを回避するようにしましょう。