寝たきりの人や麻痺があり体位を自由に変えることができない人は褥瘡ができることがあります。
日本褥瘡学会では褥瘡の定義を、一定時間外力が体に加わることでて骨と皮膚表層の間の血流が低下し組織が阻血性障害に陥ることとしています。
寝返りを打つことができない状態などでは、同じ場所に外力が加わるので褥瘡の状態になります。
褥瘡の皮膚症状
褥瘡が起きやすい場所の皮膚は毎日観察を行っていく必要があります。
褥瘡の深さによって皮膚に現れる症状は異なってきます。
①初期の褥瘡は皮膚に赤みが出ます。
②初期段階の褥瘡が進行すると、今度は皮膚に水疱やびらんが見られるようになります。
③褥瘡周辺にも発赤が認められるようになり、炎症が強い状態になります。
④皮膚の下に膿瘍が認められるようになります。
⑤皮膚が壊死して血行はなくなり黒くなります。
⑥壊死した皮膚を切除すると黄色い皮下の壊死組織が残ります。
褥瘡が起きやすい場所
体位によって褥瘡が起こりやすい場所は違います。
それぞれの体位で褥瘡が現れやすい皮膚の場所は次のとおりです。
仰臥位の場合
仰向けの姿勢であることから、仙骨部に多く見られます。仙骨部はお尻の中央で骨が突出している部分です。
褥瘡の3分の2がこの場所に発生するというほど頻度の高い場所です。広範囲に及ぶことで膿瘍や敗血症を起こす原因になります。
仙骨部以外で出来やすい場所は以下のとおりです。
・後頭部
寝たきりの場合は後頭部に褥瘡ができる場合もありますが、大きな合併症が見られず治癒が期待できる場所です。ただし、毛髪が薄くなってしまいます。
・踵
踵も褥瘡ができやすい場所ですが、合併症がなく治癒が期待できます。
・背部
肩甲骨部や肋骨などは広範囲で褥瘡を起こすことになるため、治癒までに時間がかかります。
座位の場合
車椅子などを使用している場合には以下のような場所に褥瘡が出来やすいです。
・坐骨結節
座った状態の時に一番下に骨が突出している場所で、左右2か所存在します。半身麻痺の人に発生しやすく、重症化してしまう場合が多い場所です。
側臥位の場合
・大転子
大腿骨で最も外側に突出している場所ですので、簡単に深部まで進行してしまい膿瘍を作ってしやいやすい場所です。
・くるぶし
内側と外側、両側のくるぶしに褥瘡が出来やすいですが、合併症なく治癒が期待できる場所です。
腹臥位(うつ伏せ)の場合
うつ伏せ状態の場合には顔に褥瘡が出来やすいですが、合併症なく治癒が期待できる場所です。他にも耳や膝、足指、乳房などにも出来ます。
褥瘡の合併症とは
褥瘡は発生した場所によっては様々な合併症を引き起こします。
皮膚の炎症、浮腫、潰瘍、発熱など、褥瘡の進行状態によって起こる症状がその多くです。
また、細菌に感染し全身に拡大した場合には敗血症になる場合があります。進行すると血圧低下によりショック状態になり、命に関わる場合もありますので注意が必要です。
褥瘡の症状が見られた場合は?
できるだけ褥瘡部分に圧迫をかけないように、体位交換は必須です。
栄養を付けて皮膚の状態を整えることや、体力が低下している場合には感染してしまわないような注意も必要となります。
また、褥瘡は組織の血流が減少または消失して虚血状態となり、酸素が行き届かず組織が壊死した状態です。血流を良くすることが重要になります。