褥瘡予防には欠かせないといわれるマットレスですが、この効果を正しく発揮させるためには、身体機能と介護力などの様々な条件に合ったものを選択する必要があります。
移乗法やポジショニングなどと一緒に、生活のシーンを想定しながら、適切なマットレスを選びましょう。
OHスケールのリスクランクを元に褥瘡の発生危険度を図り、ケアを行ううえでも重要な指標として活用されるOHスケールを用いて、褥瘡リスク管理とマットレスの選択を行いましょう。
●自力で体位変換ができるか
寝たきりで過ごすと一言で言っても、患者の身体機能は決して一律ではありません。足だけは自分で動かせる、マヒが片半身のみで自力可動機能がある、というように、寝たきりで過ごす時間がどのくらいあるのか、またサポートを必要とする体の部位がどこなのかということを観察し、体圧がかかる部分の除圧ができるマットレスを選びます。
しかし、自力で体位を変えられる人でも誰かが声をかけて促すまで動こうとしないという患者さんに対しては、自力で動くことができないと判定するほうが望ましいでしょう。同じく、動かすことができても患部の痛みが強い患者は、補助や介護が必要になります。
これらの条件を患者ごとに判定してマットレスを選択することが大切です。
●骨の突出部分が顕著な寝たきり患者のマットレスは
特に高齢者に多いのが、低栄養による痩せや廃用性萎縮です。寝たきりで過ごしている時間が長くなると、筋力が弱まって仙骨部分が相対的に突出した状態となります。
突出した部分の高さがあるほど、点で体圧がかかりやすくなり、結果として褥瘡リスクが増すことになります。
痩せが進行すると、仙骨と殿筋部に隙間ができやすくなります。委縮によって仙骨部と殿筋部の高さが全く同じになった時点が見極めのポイントです。この時から仙骨圧迫による危険に注意するべきでしょう。
仙骨部を中心にして、殿筋部に下がり(たるみ)が認められるかどうか、おむつの交換や入浴の介助を行うときに計測してみましょう。
●浮腫のある寝たきり患者へのマットレス選択
浮腫があると、体内の水分が皮下組織に過剰に溜まった状態となり、褥瘡を起こすリスクも高まります。全身を支えるマットレスを選ぶと同時に、局部のずれ力にも配慮が必要です。
〇寝たきりの褥瘡リスクに合わせたマットレスの選択
OHスケールでは、褥瘡の発生リスクを点数化して、軽度・中度・重度の三段階に判定します。軽度の寝たきり患者には汎用マットレスで対応が可能ですが、中度になると、ウレタンやゲル、ゴム素材のマットレスを、ずれ力に配慮して選ぶのが適切です。
自力体位変換が難しい寝たきりの患者には、合わせてポジショニングピローを使い、完全介護の状態となった患者には、厚さ10ミリ以上のウォーター系マットレスなど、体圧分散機能に優れたものを選択するようにしましょう。