寝たきりの状態が長く感覚が鈍くなった高齢者や、治療疾病の原因に麻痺がある時などは、褥瘡の発症時に痛みを感じないために、深刻な褥瘡を発症するリスクがあります。
これは、毎日の介助・看護の中で注視される点ですが、反対に「痛い」という感覚を訴えた患者に対しては、その痛みが治療中の損傷や疾病によるものか、また褥瘡を発症したために起こる痛みなのかを都度確認し、早期治療に取り掛かることが大切です。
○局所の「痛い」を逃さずにケアする
痛みは、圧迫によるものや皮膚の擦れに依るもの、また表皮が赤くなって痺れを起こしただれて起こるものなど、「痛い」という表現の中にも大きな違いがあります。
●どの褥瘡レベルにも痛みはある
皮膚の痛覚は神経終末がつかさどり、表皮損傷から深部(壊死組織)まで様々な痛み方があります。
痛みのレベルと具合を正しく理解するために、痛いという状態を評価するためのアセスメントをすると、訴える痛みに対する傷の確認と処置がスムーズに行えるようになります。
「どこが、どの程度、どのように」痛いかを聞き取り、それがどの頻度(いつ痛いか)で繰り返すのかを確認します。
しかし、痛いと感じる度合いは人それぞれに異なるため、指標に強くこだわる必要はないでしょう。その人が日常の生活にどの程度支障をきたす痛みを抱えており、どんな辛さを感じているかを把握します。そして、痛みを取りながら傷のケアを進める方法を考えることが大切です。
●「痛いと感じる場面」を基本にする捉え方
褥瘡治療中に感じる痛みを「安静時」「体動時」「処置時」に分けて痛みの違いを把握しましょう。安静にしている時には、炎症や感染、骨突出部の圧迫による痛みが考えられます。処置時には、ドレッシング材を交換する・創部の洗浄を行う時や、デブリドーマンなど外科的処置を施す際に痛みを感じるでしょう。
●疼痛を性質で分ける捉え方
痛いという表現には、ズキズキ・じんじん・ピリピリなど擬音で例えられるものでも沢山の種類を秘めています。
炎症や虚血による体性痛の場合は、「ズキズキ・疼く」という痛みがあります。閉塞や圧迫、けいれんからくる内臓痛の場合「重たい・ドーンとする」という表現が当てはまるでしょう。
神経障害性の疼痛なら「ピリピリ・電気が走る・虫が這う感じ」という例えもあります。
褥瘡はその傷をきれいに治癒させる事に注視しがちですが、治療中は皮膚損傷の痛みに対するケアも重要です。褥瘡の深部が深ければ深いほど痛みのレベルも高くなります。そして患者が感じる痛み方によって、使用する鎮痛剤も異なります。
患者自身が前向きな気持ちで褥瘡ケアに取り組めるように、痛いと感じるストレスは可能な限り軽減してあげる措置を考えましょう。