床ずれの予防には、同じ部分を長時間圧迫しないことと、ずれ力を解消してあげること。この二つがとても重要ですが、皮膚の状態を清潔に保ち、潤いと弾力を与えることで、外力の影響を少なくすることができます。
皮膚に刺激が少なく、やさしいスキンケアを行うために、ガーゼを使用する人も多いでしょう。医療の現場でも、様々な用途でガーゼを使います。
床ずれをケアする場合、どんなシーンでガーゼを使うか。正しい利用方法を考えて見ましょう。
○床ずれ処置時に欠かせない医療用ガーゼ
病院では、怪我が術後の処置を行うとき、必ずといっていいほどガーゼを使用します。傷口ににじみ出た血液や、床ずれの創傷部分の滲出液をきれいにふき取るシーンを目にする機会は多いでしょう。
●床ずれの傷を覆うドレッシング材の役割
外傷性の擦り傷や切り傷は、治療効果のある塗り薬や消毒液を用いて洗浄殺菌し、特に浅い傷なら被覆せずに完治を目指すこともあります。
しかし、床ずれの創面は外傷性と違い、皮下組織の圧迫と損傷によります。そのため、自浄機能が働いて床ずれの箇所には水疱や滲出液が現れます。
この滲出液で創傷部分が湿潤状態になると、床ずれも快方に向かいやすくなります。乾燥した状態にならないために、床ずれの傷は(ごく初期の発赤など経過観察段階を除いて)、ガーゼや被覆材を使ってドレッシングし、保護してあげることが大切です。
●どの床ずれにもガーゼを用いてよいか
傷口の処置を行う場合、洗浄でガーゼを用いるなら皮膚に直接こすりつけるのではなく、やさしくなでるように使用します。やわらかいガーゼでも、少しの擦れやずれによって皮膚は傷ついてしまうことがあります。
創面に外用薬を塗布した後に、ガーゼで覆って傷口を保護しますが、ガーゼは「吸収力が高い」ということを念頭において使用しなければなりません。
滲出液が少なくて、傷口の乾燥が進みがちな場合は、ガーゼを用いてドレッシングすると逆効果になることがあります。
また反対に、滲出液が過多の場合、ガーゼ部分に吸収した滲出液がずっと創面に触れていることで創周辺の浸軟を招きやすくなります。
●床ずれの傷にガーゼを使用するときの注意点
滲出液が多い場合は、吸水性の高いパッドを用いるなど、コントロールしやすい被覆材をあわせて使う様にしましょう。
医療用具は相対的に価格が高いですが、他のドレッシング材と比べてガーゼは安価です。ガーゼを多用して床ずれを保護すると、重ねた部分に高さが生じ、ずれ力や圧迫箇所がうまれて床ずれを招くことになるかもしれません。
また、創部分に外用薬を塗布した後にガーゼで覆っても、創傷部分とガーゼの間に隙間が生じやすく、被覆材としての機能が低下することもあります。
傷口と滲出液がガーゼに張り付いてしまっては、はがす段階で更に傷を深めることになりかねません。
非固定(張り付きしにくい)の素材を使って傷を保護するといった様に、傷の状態を見てそれぞれに合ったドレッシング材を選ぶようにしましょう。