介護や介助で大変さを感じるのが、食事の場面でしょう。食べ物の堅さや量、食べやすさや栄養バランスなど、一度の食事から全ての問題を解消することはできません。
毎日食べる食事だからこそ、楽しみながら栄養をより多く経口摂取できる工夫と取り組みが必要になります。
○食事量が減る高齢者の栄養と褥瘡
バランスの良い食事を毎回きちんと食べられるのがベストですが、高齢者になると食事を取る量そのものが減って、充分に栄養を取り入れるだけのボリュームを食べること自体が難しくなります。
その結果、低栄養状態となり、身体の機能が充分活かせずに、体のいろんな箇所で不具合が出てきます。皮膚や筋肉を作るために必要なタンパク源が減ると、褥瘡を起こしやすくなり、また治療も思うように進まなくなってしまいます。
●まずは食事の楽しさを取り戻して栄養を摂る
少ないながらも、楽しんで食べることが健康維持と治療にはとても大切です。特に、皮膚にまで栄養を届けて、健康を維持することを考えねばならない褥瘡の治療では、食べたいという欲求を引き出すことも治療の一環といえるでしょう。
些細な会話を交えながら、食べられるものや好きなものを食事に取り入れ、好みの味を優先させることから始めましょう。
●治療と目標栄養量を考えながら食事量を増やす
健康な体の基礎を取り戻すことから始めることを第一に考えます。人の体は、食事量が減ったまま長らく過ごしていると、低栄養の状態でも生きていられるように低体温状態になります。生命維持を最優先した飢餓状態は、栄養を多く取り入れ、それを繰り返すことで解消します。
食べる楽しみを感じながら食事ができるようになったら、体が褥瘡を治療するための栄養を意識して、たんぱく質を多めに摂取する食事を始めていきます。
嚥下や咀嚼、好みの問題もありますので、食材選びは慎重にしましょう。
○食事を取る環境も見直して褥瘡ケアを
栄養を取り入れるためには、食事内容を慎重に考えることにばかり注意が行きがちですが、どのような環境で食事をしているか見直すことも重要です。
前向きに楽しく、食べやすい食事環境には、姿勢をまっすぐにして、体をよじらず、嚥下に影響する体勢にしないことが大切。食べるということはある程度の集中力を必要としますので、必要以上に多く話しかけたり、テレビを見ながら(体をよじって)食事をしたりする環境を見直さねばなりません。
寝たきりの人に、臥床位で食べさせる人はいないでしょうが、体を起こしすぎると頭が差がり、前かがみになって食べ物を飲み込みづらくなります。体に合わせて、ベストな体勢で食事ができるようにしましょう。
褥瘡も他の疾患と同じように、治療が必要です。そして傷が治る早さは、体の栄養状態と大きくかかわります。栄養補助食品なども上手に使いながら、低栄養状態にならないように、たんぱく質を中心として健康維持に必要な食事を考えて、徐々に整えていきましょう。