体の一部が不自由な環境にあれば、その移動も楽ではありません。自立歩行ができると、行動や姿勢の保持はさほど難しくありません。しかし下半身や片半身が動かない場合、動きの自由度が急激にさがり、移動や移乗を難しく感じる様になります。
移動の時間を縮めて、スムーズにかつ体に負担無く行うために用いられるのが車椅子です。ただ、便利だからといって車椅子にずっと乗ったまま、あらゆる生活を行おうとすると、別の箇所に体の不具合が出てくるかもしれません。
○座位をとる場合の注意点
半身の一部や片足の障害がある場合は、松葉杖やステッキ、(切断の場合は)義手義足などの代用福祉用具を使って、できるだけ残った身体機能を温存するための生活を行う様に指導されます。
歩くこと、移動することそのものが、体の一部に障害を備えているひとにとってリハビリの役割を果たします。ただ、残存機能を生かして無理に動こうとすると、そこにかならず「ずれ・こすれ」が起こります。座った姿勢を維持しようと細やかに動くと、さらに大きくずれて、元の理想的なポジションに戻れず、不安定な姿勢になってしまうことにも注意しましょう。
○広範囲で体を支える座位を取ること
褥瘡を起こす大きな原因は、体圧とずれ力です。この二つをクリアすることで褥瘡予防に効果が出ます。体一箇所を基点として支えるのではなく、広い面と範囲で体全体を支えられるような座位のポジションを考えましょう。
●仙骨部分の圧迫を避けすぎない座位
座位が長くなると、どうしても臀部、特に仙骨部分に体圧が集中します。この圧迫を避けるために、骨盤を後傾させて半寝の状態姿勢をとっている人を見かけます。
ただし、骨盤が後傾した姿勢は尾骨と仙骨部分、更には背中の上部だけで体を支えることになり、骨の突出した部分に圧が局所集中しやすくなってしまいます。
さらに、局所圧が高いだけではなく、ずれ力もかかりやすいため、褥瘡の予防はおろか、発症リスクを高める危険性があります。
●猫背で背面を使って体を支える座位は
車椅子の計上にもよりますが、布製のハイバックのような簡易車椅子にのると、背もたれ部分に体を預けると、布の伸びで猫背の体勢になります。
背中前面で体を支えられているような感じを受けるでしょうが、このとき体幹が丸くなっているので、背骨部分が飛び出た状態になっています。
背中の面で体を支えるため、太もも部分が浮きやすくなり、骨盤も後傾します。すると、飛び出た背骨(脊椎)部分で重みを受け止めるため、結果として局所圧を高めることになります。
座位の姿勢が長くなるときは、とにかく広い面で体を支えられ、なおかつ骨盤が後傾しない様に気を配る様にしましょう。体を体幹と臀部だけで支えるのは難しいので、クッションなどを使い、隙間をなくしてずれ力を起こさないポジションを取りましょう。
同じ姿勢で数時間座っているだけでも、褥瘡が発生するリスクがあります。最低でも1時間ごとに圧を抜き、姿勢を返るようにしましょう。