寝たきり患者の褥瘡を予防する体位変換

基本的な考え方として、体位変換の間隔は基本として2時間ごとの体位変換なら行ってよいとされてます。ただ、症状や患者ごとの組織耐久性、全身状態、治療の目的、皮膚の状態や活動性・可動性のレベルに応じて検討し決定すべきです。一定圧が2時間を超えるころから皮膚に変化が生じたことを確認したという、動物実験を根拠にこの間隔が定番化した由来があります。しかし、2時間おきにすべての入院患者の体位変換を行うのは非常に重労働です。観察も兼ねた体位変換を満足がいくほどに行うには、体圧を吸収して分散するためのマットレスを使用するのが主流となっています。

○何時間ごとにマットレスの体位変換をするか

体圧を分散するマットレスを使用していても、同じ姿勢で長時間いることは、良いことではありません。マットレスを使用していてもやはり、4時間おきの体位変換は必要です。短い間隔でこまめに体位を変えたほうがいいのが当然だと思われがちですが、一概にそうとも言い切れません。まず、高齢者の場合、皮膚組織の硬化と弾力性のなさから、頻繁な体位変換でずれ力を引き起こし、さらに褥瘡リスクを上げる可能性もあります。また、夜の就寝時に何度も体位変換を行うと、良質な睡眠を維持することができなくなります。寝たきりの患者は、けがや疾病の痛みのせいで、なかなか寝付けないこともあります。やっと眠りにつけそうだと思った矢先に、夜間の体位変換で体を動かさねばならないスケジュールに、看護師と患者双方が躊躇してしまうことは現場でよくあることなのです。それぞれの患者の状態やケアの進行度、体調の安定をみて、日中のうちに変換間隔の決定をしておくようにすべきでしょう。

○ポジショニングを活用する

ポジショニングは、運動機能障害などがある人に、クッションやまくらなどを使って相対的な位置関係を設定し、目的に適した姿勢を安全で快適に保持することを目的とする細かな体位変換です。単純に体位を変えたからといって、それが褥瘡の予防目的としては達成されていても、快適な姿勢を保っているかという疑問については、不適の可能性もあります。体位を変えて、不自然に感じられる体勢を、安楽なポジショニングを行うことで褥瘡の予防と無理ない姿勢保持につながります。首の下の隙間や膝、肘の関節裏には、ポジショニングピローを用いると、骨突出部分一点にかかる加圧を分散させながら、持たれる面積を広くし、寝ている姿勢をさらに楽にすることができます。このような方法を「スモールチェンジ法」といいます。大がかりな体位変換を毎回実施することが、必ずしも患者のためになるとは限りません。小まくらやポジショニングピローを使った体位変換で、患者にあった楽な姿勢を保持し、体位変換による連鎖損傷や睡眠不足を解消することができます。