褥瘡が起こる原因から対処法をさぐる

長期間同じ姿勢を強いられる入院時や、自宅での療養の際に、病気を治すケアとは別に、床ずれを起じさせないように配慮することが大切です。医学的には、床ずれの事を「褥瘡」と言いますが、寝込んで横になっている体勢が長くなると、人間は無意識に体勢を変えたくなります。これは、寝ている姿勢が体の一部または複数部を圧迫することで、しびれや痛みを感じることが原因です。

○褥瘡を生じる原因

入院中にずっと寝たきりの姿勢で過ごす場合、腰や背中、肩甲骨と後頭部に、次第に痛みを感じてきます。そのため、ベッドのリクライニングを利用して、座位に近い状態に体位を変えたり、可能な限り自分で動かせる部位を稼働させたり、しびれや痛みを取り除こうとします。布団やマット等に押しつけられるほど、その部位は痛みを感じます。寝ている姿勢に体重と重力が加わり、特に腰から仙骨部分にかけては、全体の50パーセント以上の加重がかかります。褥瘡の直接の原因は圧迫ですが、骨の突起部分には体圧が集中する為、他の箇所に比べて褥瘡を引き起こしやすくなるので、特に注意が必要です。

●麻痺や感覚低下

体の痛みを感じると、それを回避しようとして体が動くのは反射神経が正常な場合です。しかし、高齢者や体にマヒがある患者は、体圧による痛みやしびれを感じられない(感じにくい)ため、褥瘡が進んでいることに自覚がない場合があります。病院看護では、体位を変えて褥瘡を防ぐケアを看護計画の中に組み込み、定期的なチェックや経過を見ることが可能です。しかし、在宅看護の場合、寝たきりの姿勢で過ごす患者本人が、その症状に気付くことができず、気がつけば皮下組織の深い部分にまで褥瘡が進行していた。というケースも珍しくありません。

●皮膚の弾力低下

同じ姿勢で、骨の突出部分を長く圧迫し体圧がかかり続けると、赤みが生じます。この赤みこそが床ずれ(褥瘡)初期の状態です。また、高齢になればなるほど、肌の潤いが損なわれ、皮膚の乾燥が進みます。乾燥した皮膚は弾力性が失われてしまうので、骨の突出部分周囲の皮膚にちょっとした布団とのこすれや圧力がかかるだけで損傷しやすくなります。骨が突出した部分は、脂肪や筋肉が他の部位と比べて非常に少なく、弾力を失った皮膚が損傷すると、すぐに骨が露呈してしまい重症化する可能性もあります。体圧を吸収する医療用マットや、関節の加重を和らげるクッションを併用するなどの対処を行い、摩擦を生じさせないように気を配ることが大切です。