床ずれが起こった箇所を洗浄するのは、洗剤が傷口に触れてよくないのではないかというのは誤解です。ただ、床ずれ箇所をどのように洗浄するかという方法と手順は正しく理解しておくべきです。傷ができてしまった箇所は、薬を塗布するだけでは良くなりません。
傷口に染みる痛みを想像して、洗わないまま放置すると、皮膚を清潔に保つことができずに感染症リスクを高めてしまいます。
○床ずれを洗浄する意味
皮膚が切れ、炎症を起こしたことの有る人が、床ずれの傷を見ると、「その箇所を洗浄したら痛みがあってかわいそうだ
と思うかも知れません。しかし、高い洗浄成分が入った洗剤で、ごしごしと洗えば床ずれが治るのか?といえばそれも違います。
●きれいにして感染を防ぐ
入浴など全身的なケアを行うと、体の自由が利かない患者さんは、体も心もリフレッシュすることができるでしょう。単に体をきれいにする目的だけではなく、他の箇所で床ずれが起こっていないか、床ずれの箇所で壊死が進行していないか、も合わせて確認しましょう。
床ずれでもっとも怖いのが感染症の発症です。感染を予防するためには、細菌を多く繁殖させない環境づくりと、感染リスクを考えることに尽きます。
●床ずれに洗浄は必要か?
在宅の介護者は、人一人を抱えて入浴させるなど、体力や気力がなえてしまいそうなたくさんのタスクをこなしています。床ずれの発生を確認して(予防しながら)毎日処置するのは非常に大変です。
しかし、床ずれごとに最低一日一回創をきれいにすれば、必要成分が肌に浸透しやすくなるはずです。薬の効果を高めて上皮化を進め、湿潤状態の維持や皮膚乾燥を和らげるのに、とても有効でしょう。
○床ずれが起こった箇所の洗浄方法
皮膚の炎症を確認した箇所は、体の成分と近い(中性)の石鹸または洗顔料を使ってやさしく洗います。
しっかりと泡立てた洗浄材を、まずは気になる箇所に置いていきましょう。洗浄成分が高い場合、強い刺激を感じて、乾燥が進むことがあるので注意しておきます。泡をこすり付けるのではなく、傷から多くはみ出したところにまで、細菌リスクを考えておかねばなりません。
石鹸の泡は、床ずれの部分でごしごしこすらずに、泡の空気を使って上からやわらかく押し付けるようにします。洗浄剤が体に付着したままにならないように、洗った後はしっかりと流してあげます。
洗浄した後は、油脂性の塗布材などを用いて保湿に注意し、傷口全体を被覆材でカバーします。
無理に石鹸を使わずに、水道水を使って洗い流すだけでも良いでしょう。蛇口からではなく、一度スポイトつきの水差しボトルを使うと、水量をコントロールしやすくなります。