寝たきりで過ごす患者の中には、麻痺などの神経障害が元で自ら動くことが困難な場合と、治療の過程で安静にしておかねばならない状態にある場合があります。
特に、呼吸困難や容態の急変が疑われる重篤患者の場合、絶対安静の環境づくりが優先され、生命を脅かす症状に対しての経過観察は注視される傾向が強くなります。
心拍や呼吸、心電図や脈拍、投薬の状態を確認する頻度は多くなりますが、全身の状態を確認する回数が減ってしまうと、ベッドの上で同じ姿勢をとりつづける時間が長くなり、体位変換への注意が薄くなりがちです。すると褥瘡リスクが上昇し、体力が減少している患者の感染症や細胞壊死など、複数の病気に対するケアが必要になってしまいます。
可能な限り、褥瘡リスクを軽減するための処置や措置を講じ、経過観察を行っていく事で、慢性的な褥瘡リスクを脱するサイクルを考えましょう。
○治療上の体位制限がある時
治療中の患者をモニタリングする機器を装着している場合は、安静な姿勢が条件となりますが、全身の体位変換を行う時に可動制限が起こります。すると、動かせない部位や動かしづらい箇所に褥瘡発生のリスクが高まります。
まずは、治療室や病棟看護士、理学療法士と相談をして、ケアの方法を考えることが先決です。心電図モニタやパルスオキシメーターを確認しながら、患者が辛いと感じる体位を避け、苦痛を和らげる事が大切になります。
褥瘡を回避する体位変換を優先すると、患者自身がその体位に落ち着けず安定しません。そのため、体位が崩れてずれ力が発生することも視野に入れて、適切なポジションを総合的に考えてケアに取り組まねばならないでしょう。
○座位を保つことで褥瘡リスクを防ぐ
呼吸困難の症状がある場合は、寝たきりの姿勢から座位または半座位の姿勢に移ることで、横隔膜が広がり呼吸をしやすくなります。
寝たきりの姿勢を取り続けるよりも、肩や後頭部の褥瘡回避をしやすくなりますが、反面臀部や太腿部の体圧が高くなるので、圧迫箇所には加圧を和らげる措置を充分に検討しなければなりません。
クッションや体圧緩和マットレスを使用しながら、ベッドで使用するオーバーテーブルを併用するのも良いでしょう。少し前かがみになるような位置を探り、後頭部と背部に枕を隙間なく当てて体を枕やクッション材に持たれるようにします。
座位が取れたら、前後左右に体位を移動し、同一体位を防ぐようにしましょう。この時も、動かし具合が微少であっても必ず介助の手を入れ、ずれ力や圧迫を行ないように注意しましょう。