褥瘡の治癒レベルを計るための一つの指標として、「上皮化」があります。褥瘡の創傷程度によっても異なりますが、上皮化に必要な環境を整えて、適切な順序を経て、完治を目指しましょう。
〇皮膚の治癒過程と上皮化
皮膚が欠損、損傷を起こした場合、完治までの過程は大きく4段階に分けられます。そして、皮膚上皮化が起こるのは、傷部分の修復が進み始めた「細胞増殖期」と呼ばれるタイミングです。
●褥瘡治癒間近に起こる上皮化
上皮化がスタートするのは、完治(治癒)までの過程の中で最終段階に差し掛かるころです。これ以前の段階で、良好な肉芽細胞が育っていないと、上皮化は起こりません。
褥瘡の創傷治癒過程には、「血液凝固期」「炎症期」「細胞増殖期」「成熟期(再構築期)」に分類されます。そして、上皮化が進むためには、下床になる細胞がしっかりと育っているかどうかによって、完治へ向かうスピードが変わるのです。
●細胞の形成促進と褥瘡完治に必要なのは
上皮化を促すためには、肉芽細胞をきちんと育てて下床となる細胞を形成することが大切です。
そして、細胞形成に必要なのが増殖因子です。褥瘡の治療は、どの段階であっても、清潔な環境と湿潤が治療のキーポイントとなります。
壊死細胞や感染菌がない、乾燥せず適度な湿潤を保っている状態が、良好な細胞形成に欠かせません。
〇褥瘡の上皮化が進まない場合の対処
褥瘡部分の肉芽細胞が形成されていても、状態如何によっては上皮化が遅延することがあります。なかでも、ポケット形成のある褥瘡には注意をする必要があります。
●ポケット形成がある褥瘡の特徴
ポケットの存在は、上皮化だけではなく、あらゆる面で褥瘡の治癒を遅らせる原因となります。ポケットの内部をきちんと洗浄を徹底するのが難しく、細菌感染が起こりやすい状況を作っていることになります。炎症や感染による過剰な滲出液が残存して、上皮化を妨げるリスクもあります。
隠れた壊死組織を発見することも困難なため、清潔と洗浄を徹底できないまま、創傷部の炎症を長引かせます。
また、ポケットの内部で表皮細胞が遊走して表皮化してしまうこともあります。この場合は、創の縁部分が盛り上がって、ポケットが陥没したような状態になります。
●褥瘡の創縁とポケットケアで上皮化を促す
ポケットの内部や創傷中心部に注意を注いでも、肉芽細胞が育った後の上皮化が遅延することがあります。褥瘡の創縁部に上皮化を促すことが治癒にとって重要なので、ポケットを切開して開放するのが一般的な対処法です。
創辺縁に上皮化が起こると、創傷患部の色が赤色から白色に変わってきます。褥瘡の色変化を見逃さず、外力が起らない治療環境と処置を継続して整えましょう。